東京駅開業100周年記念の「Suica」を購入するために多くの人が殺到し、発売が中止となる騒ぎになりましたが、記念スイカは希望者全員に販売することになったそうです。この記念スイカ、なぜそんなに人気があるのでしょうか。
東京駅開業100年記念Suica「20万円」から「レア感なし」へ
当初、1人3枚までで計1万5000枚限定でJR東日本から発売された記念Suica。しかし予想を大きく上回る人気となり希望者が殺到、「安全が確保できない」として8090枚を売った時点で販売を打ち切りました。購入希望者からは「説明しろ」「納得いかない」などとの怒号も浴びせられ、騒然となったそうです。JR東日本は残りの6910枚の販売について再検討していましたが、再び騒ぎが起こることを懸念して結局は増刷することで落ち着いたようです。購入希望者のなかには初めから転売目的の人も少なからずいたことが予想されます。インターネットの競売サイトでは「超レア」「入手不可」など高値で取引されました。「ヤフオク!」でも少なくとも500件以上の出品があり、高いものだと20万円で落札されたケースもあったとのこと。
しかし22日正午のニュースで希望者全員に販売されることが伝えられると事態は一変。20日夕方に1万2400円で出品されてから順調に値を伸ばしていた記念スイカは22日午後2時に3万1000円で入札されて以降、パッタリと動きが止まったという。22日夜に慌てて出品されたとみられるケースもありましたが、3万5000円のまま「入札なし」が続いた。出品者のなかには「レア感なし」と自虐的な言葉を入れた人もいたそうです。
デザインはなんと東京支社の女性車掌
この記念Suica、なぜそれほどまで人気が出たのでしょうか。それはひと言で言うとデザインが秀逸だからです。9月にデザインが公表されると、ネット上では「絶対入手したい」「きれいなデザインに一目惚れ」などといった書き込みが相次ぎ話題になりました。
それほどまでのデザインですから当然プロのデザイナーに委託されたのかと思いきや、なんとデザインを手がけたのは東京支社に勤務する女性車掌の鈴木裕理子さん(27)というから驚きです。ただしこの方、やはりただの車掌さんではありませんでした。都内の芸術系高校で日本画を学んでいるとのこと。
鈴木さんは都内の高校を卒業後、大学でも美術の道を目指しましたが夢は叶わなかった。その後はカフェでアルバイトをしたり専門学校で簿記を学ぶなどして平成23年にJR東日本に入社します。24年に丸の内駅舎が会場当時の姿に復元されたとき記念ポストカードのデザインを任され、社内で絵のうまさが評判になった鈴木さんに、開業100周年ポスターのデザインの話が舞い込んできたのでした。そのデザインを元に、今回の記念Suicaがつくられました。
依頼を受けた鈴木さんは、勤務後や休日の大半をデザイン作製にささげたそうです。自らカメラを手に駅舎の写真をとり、東京駅のパンフレットも収集しました。改札業務を行うなか、見上げた駅舎ドームの天井の美しさを目に焼き付け、3カ月後にできあがった作品は駅舎の窓などが細部にわたり描き込まれた温かみのある雰囲気が印象的なデザイン。
「東京駅は年配の方の利用が多く、上品な色合いになるように気を使った」
「これまでの中で一番のお気に入り」
8月からは綾瀬運輸区に異動し、現在はJR常磐線の車掌を務めているとのこと。緊張続きの毎日ですが、休日絵筆を握ると落ち着くそうです。
「どんなデザインでも描きたい。苦にならないので・・・」
きっとこの先も素敵なデザインを手がけてくれるのではないでしょうか。