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「ろくでなし子」五十嵐恵容疑者、東京地検が起訴へ 女性器の3Dデータはわいせつ物か?

ろくでなし子

ろくでなし子(スポニチ)

 自分の女性器の3Dプリンター用データをメール配信したとして逮捕された、「ろくでなし子」のペンネームで活動する芸術家の五十嵐恵容疑者(42)について、東京地検はわいせつ電磁的記録頒布などの罪で24日に起訴する方針を固めました。裁判の焦点は3Dデータのわいせつ性と表現の自由の判断になると思われます。事件を振り返ってみましょう。




7月、3Dデータをわいせつ物とした初めての逮捕

逮捕は今年の7月でした。警視庁によると、3Dデータをわいせつ物として認定して立件するのは全国初とのこと。データ自体は数字や文字の羅列ですが、3Dプリンターに入力すると形状を表現できるとして、わいせつ物にあたると判断しました。

逮捕容疑は、今年3月にインターネットを通じて自分の陰部の3Dデータを香川県に住む男性会社員(30)に配布したことでした。このとき、ろくでなし子さんは、「そのものの画像ではなく、警察がわいせつと認めたことに納得がいかない。私にとって手足と一緒と思っている。データがわいせつとは思わない」と容疑を否認しています。データをわいせつ物と認定したことに納得がいかないと供述しています。

なぜ彼女は自分の性器の3Dデータを男性会社員に送ったのでしょうか。ろくでなし子さんは、自分の性器をかたどったものを「デコまん」として漫画をはじめとするさまざまな作品にして発表しています。2012年には銀座で個展を開くなどの活動もしています。「デコまん~アソコ整形漫画家が奇妙なアートを作った理由」(ぶんか社)などの著書もあるという。彼女は、女性器をかたどったボートをつくるための資金をホームページで募っており、男性会社員は募金した見返りとしてデータを提供されたということです。全国から約100万円が集まったそうです。

3Dプリンターに関連した事件としては、川崎市の元大学職員が海外のサイトからデータを入手して拳銃を製造したというものがありました。今回のケースでは、実際にやり取りされたのはデータですから判断は微妙なのかも知れません。しかしここで見逃してしまうと、同様の脱法行為が増加していくことは目に見えています。警察としては、3Dデータをつかった犯罪が今後増加していくことを見越して、早い段階で逮捕に踏み切ったのかも知れません。

釈放後の記者会見にて

処分保留で釈放後、東京都内で記者会見した際、彼女は「自分の性器がわいせつだとは考えていない。不当な逮捕だ」と訴えています。逮捕当初は、データをわいせつ物と認定した警察の判断に異議をとなえていましたが、この段階では「自身の性器のわいせつ性を否定する」ことで容疑を否認しているようです。

「女性器がわいせつだという日本の常識はおかしい。私の体は私のものだ。男性目線から見たわいせつ性を付加するのはやめてほしい」と話しています。データだからわいせつ物とは認められないという。当初の否認方法では通用しないという判断が、弁護団との間でなされたのでしょうか。

再び逮捕される

12月に入り、再び逮捕されています。逮捕容疑は、「北原みのり」の名前で活動する作家でありアダルトショップ経営者である渡辺みのり容疑者の店にわいせつ物を展示した疑い。

東京地裁で開かれた勾留理由開示の法廷では、「作品はわいせつではない」と釈放を求めています。意見陳述では、「マ××」「チ××」など女性器や男性器を示す単語を何度も口にして裁判官に制止され、「表現を工夫しないと陳述を制限する」と注意されることも。法廷では、表現の自由はある程度制限されます。いずれにしても、3Dデータ配布の件と合わせて、自身の性器の芸術性とわいせつ性の判断が焦点になるようです。

東京地検が起訴する方針を固める

そもそも、ろくでなし子さんは、女性器の表現方法について「なぜごまかしたり、伏せ字にしなければならないのか?」と、女性器の呼称に関して疑問を抱き、活動をしています。法廷で表現を工夫せず「直接的に」指し示したのも自身の信念に基づくものだったのでしょう。女性器をわいせつなものではないというのが彼女の信念であり、それに沿った活動をしています。裁判の行方は、データのわいせつ性についての判断、そしてわいせつ性と芸術性の判断という二つの点において今後の違法性の判断に大きく影響を与えることになるでしょう。