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「肥満」は動物たちにも増えている 原因は「空気」にある可能性

動物が肥満化している

 近年、世界的に肥満が社会問題になっていますが、これは運動不足や欲望のまま食べ続ける怠惰な「生活習慣」が原因だという自覚があります。ところが、実はそれだけではないかも知れないという説があります。なぜか人間以外の動物たちも肥満化しているからです。




 2011年に発表された研究によると、12種類の哺乳類(サルやイヌ、ネコ、ネズミなど)がここ数十年で著しく体重が増加しています。

 しかし、その動物たちは人間の近くで暮らしているという共通点があるため、人間たちが非常に栄養豊富な食べ物を与えているためとか、人間たちが食べ残した廃棄物をお腹いっぱい食べているためとも考えられます。

 ところが、これらの動物たちの中には「研究室のマウスやラット、サル」も含まれているという。

 研究室で飼育されるメスのマウスの肥満の割合は、この30年間で2倍になっており、チンパンジーの平均体重は10年ごとに30%ずつ増加し、肥満の個体数は15倍に増えたとしている。

 こうなってくると、人間の食生活の乱れが動物たちに影響を与えているだけとも言い切れなくなります。

 そこで、もしかしたら「大気中の二酸化炭素の増加が影響しているのでは」と2012年に仮説を立てた研究者がいました。

二酸化炭素濃度の経年変化

(出典 二酸化炭素濃度の経緯年変化(気象庁))

血液が酸性に変化

 大気中の二酸化炭素濃度が増加すると、血液中に溶けている二酸化炭素が増えるために血液がわずかに酸性側に変化します。このことは実際に、実験で観察されたという。

 血液の酸性が増えると、飢えと渇きをコントロールする視床下部の神経細胞が活発になり、食べる量の増加につながるとしています。ただし、実験的データによる証明はされていません。あくまでも仮説。

植物の組成が変化

 まったく別の説を唱える研究者もいます。

 二酸化炭素が増加すると植物の組成が変化し、より糖分が豊富になり、逆にタンパク質含有量が減少するという。糖分が増えた植物を食べることで体脂肪が増える。

 他にも、いわゆる「オビソーゲン」と呼ばれる化学物質が体内のホルモンバランスを変化させることで、脂肪を蓄積するよう働きかけている可能性が指摘されています。

 オビソーゲンは、日本では「環境ホルモン」と呼ばれている化学物質のことで、男性の生殖能力への影響など、さまざまな健康被害をもたらす可能性があるとされています。
 
 このように、肥満が増えている問題には「生活習慣の悪化とは別の原因もある」とする可能性が指摘されていますが、いずれの説も実証されているわけではありません。

 しかし、人間以外の動物たちも肥満化している事実は、何らかの未知の影響が存在する可能性を十分に示しているかも知れない。

(via WIRED