バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.18 Thu

350万年前の古代バクテリアを露研究者が自分に投与「体に目覚ましい変化」

古代のバクテリアで不老不死

 近年、地球温暖化によって永久凍土層の融解が進み、はるか昔に活動していた微生物が相次いで見つかっています。数万年前のウイルスを発見した研究グループらはそれらの蘇生を試みており、実際に成功しているグループもあります。一方、数百万年前のバクテリアも生きたまま発見されています。そしてロシアには、この「古代バクテリア」を自分自身の体に「投与」してしまった研究者がいるそうです。そして意外な影響が体に生じているという。




永久凍土から生きたままのバクテリアを発見

 2009年、世界一寒いといわれるロシア連邦サハ共和国(ヤクーチア)の「マンモスの山」と呼ばれる場所で、実に350万年前の永久凍土層から生きた状態のバクテリアが発見されました。

バシラスF

 発見したのはモスクワ大学のアナトリー・ブロチコフ博士らのチームで、バクテリアは「バシラスF」と名付けられた。

 発見した研究チームはその後、バシラスFを培養してマウスや植物などに投与する実験を繰り返したそうです。

 すると、なんとバクテリアを投与されたマウスは一生を通して活発になり、免疫力も高くなった。さらに高齢出産が可能になるなど、繁殖力においても著しい向上がみられたという。一方、バシラスFを投与された植物はというと、こちらも成長が早くなったり、寒さにも強くなるなどの変化が生じたといいます。

植物に投与した結果

 そして動物や植物を使った実験結果を受けてブロチコフ博士が考えたことは、ある意味とても直情的ともいえます。

 「バシラスFは、人間の長寿、そして不老不死の実現につながるのではないか?」

バシラスFを自分の体内に取り入れた結果

 普通の研究者であれば人間由来の培養細胞などを使って実験するところですが、ブロチコフ博士はなんと、いきなり自分の体を実験台にしてしまったという。どのような影響があるか、まったく予測がつかないという恐怖はなかったのでしょうか。

 バシラスFが発見された永久凍土はすでに解けています。博士によるとバクテリアは水を通して拡散し、すでにヤクーチアの人々の体内にいる可能性があるという。そして「ヤクーチアの人々は他の共和国と比べて長生きする傾向にある。私にとって危険など無い」としています。

 ブロチコフ博士は、バシラスFを自分に注射することで体内に取り込んでしまいました。その結果、なんと博士の体に目覚ましい変化が起きたのだという。

 博士は、投与前と比べて「長時間働けるほど丈夫になり、過去2年間はインフルエンザにも感染していない」と話しています。マウスの実験結果と同様に、体が活発になり免疫力も向上したということでしょうか。

 なぜこのような変化が起きたのかについて、博士はそのメカニズムの解明には至っていないそうです。「もしかしたら副作用があるかも知れない」としながらも、「メカニズムは不明だが、その効果は確認できる」として、自分の体内に取り込んだ結果については満足しているようです。

 バシラスFは氷の中で数百万年も生き続けていました。博士らはすでにこのバクテリアの遺伝子解析を実施しており、長期にわたって永久凍土で生き続けるために細胞をダメージから守ってきた、バクテリアのもつ遺伝子の解明に取り組んでいるそうです。

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 永久凍土の融解によって、はるか昔のウイルスやバクテリアなどがこれから次々と解き放たれることは避けられないでしょう。そこから思いもしなかった利益を人間が獲得するチャンスもありますが、まったく予測できないリスクを被る可能性もあります。博士の体に本当に何らかの変化が生じたのかは明らかではありませんが、非常に注意を要する研究であることは間違いなさそうです。

(via TOCANA image by The Siberian Times