バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.20 Sat

薬で「運動の効果」が得られる時代がやってくるのか

運動

 「運動が筋肉内の分子に与える影響」を模倣する薬ができるかも知れない。つまり、つらい運動を行わなくても薬を飲むだけで、運動したのと同じ効果が得られる時代がやってくる可能性があるのだという。シドニー大学の研究グループの研究です。




 運動をすると人間の筋肉では複雑な反応が起きていますが、これまでは何が起きているのか詳細に特定されていませんでした。

 シドニー大学の研究チームは、トレーニングを受けていない健康な男性が10分間にわたって運動した後の骨格筋の生体組織を分析しました。質量分析法を用いてタンパク質のリン酸化を調べ、実際にどのような変化が起きているのかを分子レベルで特定しました。

 その結果、なんと1000回を超える変化が起きていることが明らかになりました。

 運動によって人間の筋肉に複雑な一連の変化が起きることは長い間推測されてきましたが、厳密に何が起きるのかを特定できたのは今回が初めてだという。

「この情報を使うことによって、運動によって起きる、本当に有益な変化を模倣する薬を設計できる」

 研究結果について、論文の執筆者ノーラン・ホフマン氏はこのように述べています。

 運動は、肥満を原因とする糖尿病や、心臓血管系の疾患、神経疾患など多くの病気の治療につながります。しかし運動は多くの人にとってつらいものですから、もし薬によってその結果のみを得られるのであれば画期的であるというわけです。

 しかし今回の研究によって、運動によって起こる変化は非常に複雑なものであることがわかりました。

 研究チームのデイヴィッド・ジェームズ教授は「ひとつだけではなく、複数の反応を対象にした薬にする必要がある」としており、今回の研究はそれを突き止めるための工程表だと述べています。

 薬の開発が可能だとしても、まだまだ先になりそうです。今はひたすら、汗を流して運動を楽しむことにしましょう。

(via WIRED