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「三つ子の魂百まで」は本当だった? 科学的にも正しい理由とは

三つ子の魂

 「三つ子の魂百まで」など、幼い頃の性格は年を取っても変わらないといいます。または3歳までにいろいろな経験をさせて脳を育てるべきなどともいわれます。これらは本当なのでしょうか?どうやら科学的にも正しいことのようです。




 人間の脳は、電気信号をやりとりする千数百億個もの神経細胞から成り立っています。神経細胞からは「樹状突起」と「軸索」が突き出していますが、樹状突起はほかの神経細胞から信号を受け取る「アンテナ」、軸索は信号をほかの神経細胞へと送る「出力装置」としての役割をもちます。

 神経細胞は、細胞あたり数千から2万個もある「シナプス」を通して、ほかの神経細胞と情報のやりとりをしています。つまり、神経細胞どうしをつなげて複雑なネットワーク「神経回路」を構成している要ともいえます。

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出典:神経細胞の構造(http://www.brain.riken.jp/

 子どもの脳の重さは、生まれた直後で約400グラム、3歳で1200グラム、そして5歳頃でようやく成人と同じ1300~1400グラムになるといわれます。

 このように、生まれてから5歳前後まで次第に脳が成長していくようですが、一方で「シナプスの数」については、少し挙動が異なるようです。

 米シカゴ大学のピーター・ハッテンロッカー教授らの研究によると、シナプスの数は1~3歳頃にピークを迎えてしまい、その後は少しずつ減少するという。これは「シナプスの過形成と刈り込み」と呼ばれています。どういうことでしょうか。

シナプスの過形成と刈り込み

 生まれたばかりの子どもには、脳に何らかのダメージが起きた場合に備えてシナプスを過剰に作っておく働き(過形成)があるそうです。そしてその後、1~3歳頃になると作られたシナプスの中でも特によく使うシナプスを太くするため、周辺のシナプスを減らしていく(刈り込み)のだという。

 このようにあらかじめ過剰量のシナプスを形成して、あまり使われないシナプスを減らしていくことで、情報伝達の効率化を図っているようです。

三つ子の魂百まで

 さて「三つ子の魂百まで」についてです。3歳頃までによく使われたシナプスが強化され、使われなかったシナプスが消失することを考えると、この頃までに繰り返された思考パターンがその後も残っていくことが予想されます。

 また、この頃までによく経験させて脳に刺激を与えることで、シナプスを強化することは可能であるともいえそうですね。

 やはり通説通り、3歳までに性格や知能の大部分が決定されると科学的にも説明できるようです。

 ただし、神経細胞ごとのシナプスのバランスが崩れてしまうと、その後どのように影響が出るか予想ができません。特定の能力を高める目的で極端な脳トレーニングを施すというよりも、さまざまな刺激を与えてあげるほうがよさそうな気もします。

(via ヘルスプレス