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特定の遺伝子を欠失することで寿命を延ばす実験

DNA

 遺伝子を操作して寿命を延ばすことに成功したとする研究結果が発表されています。もちろん人間ではなく、酵母の話ですが。しかし、老化と遺伝子の関係や疾患の発症リスクを減らす可能性など、人間の長寿の実現にもつながる研究かも知れません。




 老化に関する研究を行う米国の研究機関「The Buck Institute for Research on Aging」とワシントン大学の共同研究チームが、特定の遺伝子を欠失させることによって酵母の寿命を延ばすことに成功しました。

 研究チームは、どの遺伝子が「老化」に関与しているかを特定するため「細胞の分裂回数」を測定しました。出芽細胞を利用して、細胞が何回分裂できるかという「複製寿命」を調べました。

A Comprehensive Analysis of Replicative Lifespan in 4,698 Single-Gene Deletion Strains Uncovers Conserved Mechanisms of Aging

 とても非常に気の長い研究ですが、4698種類もの遺伝子をひとつずつ欠失させることで、どの遺伝子を欠失させると複製寿命が変化するかを確認していったそうです。

 その結果、238種類の遺伝子が複製寿命に関係することがわかりました。これらの遺伝子は人間を含む哺乳類の遺伝子にも多く存在するという。特に、このうち「LOS1」と呼ばれる遺伝子は、これひとつを欠失するだけで細胞の寿命がおよそ60%も延びたそうです。

 興味深いのは、LOS1は「断食によるカロリー制限」に関係する遺伝子ということ。この遺伝子を欠失することで、断食がもたらす老化遅延効果と似た現象が起きるのだとしています。

 断食と老化の関係については、南カリフォルニア大学の研究グループが「周期的な低カロリー食を摂取することで老化を遅らせることにつながる」とする研究結果を発表しています。
Diet that mimics fasting appears to slow aging

 今回の研究で得られた結果は出芽酵母の分裂回数の延長ですので、「人間の寿命」を延ばすことからは遠い話です。しかし今後の研究次第では、老化しにくい体や病気にかかりにくい体などにつながるひとつの知見として発展する可能性もあるかも知れません。

(via Gigazine image by Stuart Caie