コンピューター上で人間と同じような知能を再現させる「人工知能(AI)」技術は、ご存じの通りさまざまな分野で応用されるようになりました。もちろん医療分野も例外ではありませんが、なんとAIを使ったX線画像診断のシステムが開発されているという。いったいどのようにAIを活用しているのでしょうか。
開発したのは米サンフランシスコで医療・ヘルスケア領域に特化した開発会社の「Enlitic」。近年、AIの分野で非常に強力な手法として期待されている「ディープラーニング(Deep Learning)」を応用しました。
ディープラーニングとは、AI分野でいうところの「ニューラルネットワーク」を3層以上に多層化したもので、とくに画像認識や音声認識などの分野で活用されています。画像などのデータを入力すると、情報が第1層からより深層へと伝達され、その過程で学習が繰り返されるという。
どのようなシステムか
同社が開発したシステムでは、放射線技師から提出された画像についてはじめに画像対象が正しいかどうかを判断します。つまり、例えば「左ひじ」とタグ付けされた画像が、実際に「左ひじ」の画像であるかどうかを確認します。
画像の正しさを確認した後に、医学的な異常がないかどうかを判断します。もし異常があれば、その内容に応じた専門の放射線医に転送されます。
異常がある場合は、画像の「優先度」が高く設定されます。一方、画像に異常がないと判断された場合は優先度が低く設定され、担当の放射線医が確認した後に、ソフトウェアが定型文を自動生成するなど事務処理をサポートします。
このように、AIによる画像診断は絶対ではなく、どちらかというと放射線科の専門医をサポートするシステムになっています。つまり、作業を迅速化してくれたり、あるいはミスを減少するためのシステムです。
人間の行う医療行為においては、どれだけ注意を払ってもミスをする確率をゼロにすることはできません。そこで、このようなAIを活用することで作業効率を上げ、担当者の負担を軽減してミスを防ぐようなシステムを構築する必要があるのかも知れません。
(via WIRED image by clement127)