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麻薬に依存性はないのか? 1本の動画が話題になっている

麻薬の依存性

「麻薬には依存性はない」と言われたらどのように思うでしょうか。そもそも依存性が問題だからこそ規制されているわけですが、「Everything We Think We Know About Addiction Is Wrong」という動画が異議を唱えています。その内容をご紹介します。




麻薬の依存性については常識とされていますが、動画ではまず、「なぜ、病院でモルヒネを投与された患者は麻薬中毒にならないのか」という疑問を投げかけています。

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病院で患者に投与される「ジアセチルモルヒネ」は、一般的に麻薬として流通されているものと比べてもはるかに純度の高いヘロインで、場合によっては長期にわたって定期的に体内に取り込まれます。しかし退院後に中毒患者になることはないと説明しています。

そもそも、麻薬の依存性について実験的に証明されたのは1960年代のこと。

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スタンフォード大のアブラム・ゴールドシュタイン教授らが行った実験は非常に単純なもので、小さな檻のなかに1匹のマウスを入れ、「水が入ったボトル」と「ヘロインの水溶液が入ったボトル」を設置、どちらを飲むかを観察したという。

実験の結果、マウスはヘロイン入りの水を飲み続けて死んでしまった。そのため、麻薬の依存性が証明されたと結論づけたという。

しかし1970年代に入り、ある心理学者がこの実験に疑問をもちました。カナダのサイモン・フレーザー大学のブルース・アレグサンダー教授は「なぜ、檻の中には一匹のマウスだけなのか?孤独ではないのか?違う環境ならどうなるのだろうか?」と考えたそうです。

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そこで、教授は広い檻に芝生や遊具、さらに数匹のマウスを入れた「マウスの楽園」を作り、同様に2つのボトルを設置して再び実験しました。

結果は以前の「孤独なマウス」とは違い、マウスはヘロイン入りのボトルを選ばなかったという。

次に、マウスではなく人間の事例を挙げています。

ベトナム戦争ではアメリカ兵の20%が先行きが見えない悲壮感を紛らわすために麻薬を使っていたそうです。そのため、終戦後に帰国した軍人によって全米中が中毒患者であふれるのではないかと心配されました。

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しかし追跡調査の結果、実際には95%以上の軍人が麻薬を断ち切り、中毒患者とはならなかったという。

これらの事例から、アレグサンダー教授はマウスでいえば「檻」の問題、人間でいえば周囲の環境が問題ではないかと考えました。

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異国の地で麻薬に手を出した軍人たちも、家族の元に戻ったときは「檻」から出て「楽園」へと入ったのだという。

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動画では「幸せは人との繋がりの中にある」としています。それができなく「孤独」を感じるとき、別の安らぎを得ようとして麻薬に依存する。逆に中毒に陥っているときは「繋がりの危機」を示す症状なのだと言っています。

麻薬中毒は薬物による化学的な作用ではなく、孤独を埋め合わせるための依存だとしています。ヘロインそのものに依存性がないと結論づけてよいかどうかはさておき、実際に孤独などの不安から薬物依存に陥ったり、逆に周りとの「繋がり」によって中毒から立ち直るケースは確かにあるかも知れません。

(via TOCANA