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道路の騒音が寿命を短くする可能性がある

騒音

最近では、老後は都会にある便利なマンションに移り住むという人も増えているようですが、ちょっと気になる研究結果が報告されています。騒音のレベルが大きい地域に住む人は、静かな場所と比べて死亡率が高くなるというのです。とくに高齢者では悪影響が大きいという。




道路騒音と死亡率の関係

ロンドン大学の研究グループは、2003年~10年にロンドン市内に住む860万人のデータを分析して健康に与える騒音の影響を調べました。

道路の騒音レベルと、脳卒中や心筋梗塞による死亡数や入院件数を比較しました。騒音のレベルは(1)55デシベル未満、(2)55~60デシベル、(3)60デシベル以上の3つのグループに分類し、また25歳以上の成人全体と75歳以上の高齢者について分析しました。

ちなみに一般的な騒音レベルで表すと、例えば50デシベルは「静かな事務所」、60デシベルは「普通の会話」、70デシベルは「掃除機」とのこと。

分析の結果、昼間の道路の騒音が60デシベルを超える地域の住民は、55デシベル未満の地域と比べて死亡率が4%高く、脳卒中で入院する割合も5%高かったという。75歳以上の高齢者に限ってみるとさらに差があり、9%も高くなるそうです。

研究グループによると、騒音と健康の関連は成人全体よりも高齢者でより強く表れることから、「高齢者は道路交通の騒音に弱い」としています。

道路騒音とスズメの寿命

道路の騒音と健康については、仏国立科学研究センターの研究グループが少し変わった研究をしています。

研究グループは、「スズメのひな」に録音した交通騒音を1日6時間、1週間にわたって浴びせ続けました。ひなが生後9日に達したとき、騒音を聞かされ続けたひなは、「田舎の静かな環境」でふ化させたひなと比べて染色体の末端にある「テロメア」の長さが著しく短いことがわかったという。

テロメアは染色体を保護する役目があり、「寿命との関連性」を示す多くの研究が発表されています。騒音を浴びたひなが、実際に寿命が短くなったかどうかまでは追跡できなかったそうですが、研究グループは「道路騒音が影響して寿命が短くなる可能性がある」としています。

騒音が健康に与える影響についての研究は、ほかにもいくつか報告されています。食事や運動などの生活習慣とともに、「生活環境」についても目を向けることも大事ですね。

(via HEALTHPRESS image by Carlos ZGZ