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親から受け継いだ遺伝は運動能力にどのくらい影響するか

運動能力と遺伝

プロのスポーツ選手の華麗なプレイをみると、自分には到底できそうにないことだと感じてしまいます。もちろん厳しいトレーニングを積んだ結果ではありますが、生まれもった才能、すなわち「遺伝」の部分もあるでしょう。人間がもつ運動特性の何パーセントが遺伝的影響なのでしょうか。




米メリーランド大学運動生理学部のStephen Roth教授が、いくつかの運動特性について、遺伝が影響する割合「遺伝率」を研究しています。たとえば遺伝率が50%であれば、半分は遺伝によって決定されますが残り半分については食事やトレーニングなど、環境要因によって決定されるということです。

・有酸素運動:40~50%

軽いランニングやサイクリングなど、有酸素運動に与える遺伝的影響は半分以下ということです。それほど遺伝は関係ないようですね。

・筋力および筋肉量:50~60%

もともと筋肉が付きやすい人と付きにくい人がいると、なんとなく感じている人は多いと思います。しかし、意外にも筋肉量や筋力での遺伝率は半分強程度。トレーニング次第でいくらでも筋力は付けられる、マッチョなからだを手に入れることができるということです。

・「遅筋線維」と「速筋繊維」の混在率:45%

ようするに、持久力と瞬発力のどちらが得意かを示しています。筋肉量以上に意外な結果ではないでしょうか。結局のところ、同じ人間であれば筋肉の特性にそれほど違いはないようです。

・身長:80%

これはもうどうしようもない特性ですね。身長が必要なスポーツで優れた成果を残したければ、やはり身長の高い親から生まれるしかないのかも知れません。

最後に、「スポーツでの全般的な競争力」における遺伝率は66%とのこと。同じトレーニングを積んでも、やはり結果を残しやすい人とそうでない人がいるようです。しかし、残り3割強についてはトレーニングなどでいくらでも補うことができるともいえます。

また、「遺伝」と一口で言っても単一の遺伝子多型のみで形質が決定されるわけではなく、複数の遺伝子が複雑に影響し合うため、Roth教授は遺伝子検査をして最適なスポーツを調べることは勧めていません。

たとえば、持久力を必要とする競技選手の有酸素運動と関係があるとされる遺伝子「ACE」や、筋力と瞬発力に関係がある「ACTN3」がありますが、Roth教授は「パフォーマンス全体の1%か2%程度は貢献しているかも知れない」と述べるにとどめています。

結局のところ、生まれ持った運動特性も大事ですが、競技に対する情熱やトレーニングを持続できる忍耐力などのほうが、重要なのかも知れません。

(via LIFEHACKER