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アルツハイマー病に関係するとされる「ApoE遺伝子」子どもの脳にも影響

アルツハイマー病の発症に関係するとされている遺伝子が、実は子どもたちの脳にも影響を与えており、思考力や記憶力の低下をもたらしている可能性があるという。




子どもの脳の発達に影響を与える

アルツハイマー病の発症を予測する遺伝子マーカーに「アポリポタンパク質E(ApoE)」があります。

ApoE遺伝子には、ε3、ε3、そしてε4という対立遺伝子がありますが、このうちε4をもつ人はアルツハイマー病を発症する確率が高いことがこれまでの研究で明らかになっています。

そこで研究グループは、3~20歳の子ども1000人以上にの脳をスキャンして、ε4遺伝子と脳の発達との関係を調べました。

その結果、ε4遺伝子をもつ子どもは海馬の大きさが、ε2やε3をもつ子どもと比べて約5%小さいことがわかりました。

記憶に関係する海馬はアルツハイマー病での最初の病変部位として知られており、さらにε4をもつ高齢者でも海馬が小さい傾向にあることが報告されています。

研究グループは、さらに記憶力や思考力に関するテストを行いました。その結果、ε4をもつ子どもたちは最大で50%もスコアが低かったという。

ApoEタンパク質の生体内の機能

ApoEは主にコレステロールや脂肪酸の運搬に関与するタンパク質ですが、特に中枢神経系で産生されたApoEは、神経細胞の発達や修復に必要な脂質の輸送に関与すると考えられています。

ApoEはその他にも「抗酸化作用」をもっており、その強さはε4は最も弱いという報告もあります。

これらの機能がアルツハイマー病の発症と何らかの関係をもっている可能性もありますが、その詳細なメカニズムについてはまだわかっていません。

ε4遺伝子をもつ人は幼少期から脳の発達に影響を受けていることがわかったことから、さらに研究を進めることでアルツハイマー病の発症メカニズム、予防や治療法開発につながる可能性もあります。

Alzheimer’s gene may show effects on brain starting in childhood

参考:大阪市立大学/WIRED