渡り鳥は、数千キロから数万キロも飛び続けることができます。いったいどうすれば1週間以上も休憩を取らずに飛び続けることができるのでしょうか。どうやら、鳥たちは飛びながら「熟睡」できるらしいのです。
人間は1日あたり一定の睡眠時間を必要としています。仮に徹夜で何かの作業をしたとしても、せいぜい1日か2日が限度でしょう。
しかし、長い距離を飛ぶ種類の鳥では、なんと数カ月も飛び続けることができるという。いったいどうしたら、このように長い間の活動が可能になるのでしょうか。
これまでの研究では、鳥たちは脳の半分を停止して残り半分を使うことが可能なため、交互に休ませているだろうと言われていました。これを「半球睡眠」と呼ぶそうです。
半球睡眠は、たとえばイルカやクジラなど海中の哺乳類でも利用されていることが確認されています。これらの動物もまた、常に泳ぎ続けながら敵との遭遇に気を配る必要があるため、完全に眠ることは許されないのでしょう。
はじめて飛行している鳥の脳波を計測
しかし今回、マックス・プランク研究所の研究グループは、鳥の頭部に脳活動を記録できるデバイスを装着して実際に飛行しているときの脳電図を測定することで、脳全体が「徐波睡眠」になることを発見しました。
睡眠には、脳波の形からいくつかのモードがあることが知られています。
(睡眠段階の標準判定基準:日本睡眠学会)
睡眠を大きく分けると、眼球運動が見られる「レム睡眠」と、「ノンレム睡眠」があります。そして、「ノンレム睡眠」はステージ1からステージ4へと四つの段階があります。
特にステージ3とステージ4の脳の波形は、振幅が大きく振動数が小さいという特徴があり、熟睡状態にあるとされています。そしてこの状態にある睡眠を「徐波睡眠」と呼んでいます。
ノンレム睡眠は脳を休息させるための睡眠状態とされており、特に徐波睡眠は眠りが深く、より脳を休ませていると考えられています。
今回の研究では、ガラパゴス諸島に巣をもつ「グンカンドリ」について調べられましたが、この鳥は3000キロもの距離を休みなく飛び続けました。
飛行中の脳波を調べたところ、日中は覚醒した状態で飛んでいましたが日が沈むと脳波に変化がみられ、徐波睡眠も最長で数分間確認されています。そして、徐波睡眠は半球ではなく脳全体で見られたそうです。
つまり、鳥たちは眠らずに飛び続けていたわけではなく、短い時間ではありますが完全に「熟睡」しながらも飛行を維持することができることがわかりました。
人間でも、レム睡眠の間は筋肉が弛緩して動くことができませんが、ノンレム睡眠中は体を動かすことが可能です。鳥たちは、ノンレム睡眠中は自動飛行モードに入っているわけですね。
Evidence that birds sleep in mid-flight