偽物の薬を使っても、患者の腰痛が改善するという研究結果が報告されています。それも、患者が「偽薬」だと知っている場合であっても。つまり、いわゆる「プラセボ効果」ではないケースです。
プラセボ効果
プラセボ効果とは、実際には有効成分を含んでいない「偽薬」を投与された場合でも、プラスの効果が現れる現象です。
患者が「有効な薬を飲んでいる」と思い込む心理的な効果が、症状の改善に良い影響をもたらす現象です。
薬のもつ本来の薬効を見積もるためにプラセボ効果が確認されますが、そもそもプラセボ効果が現れるためには「患者自身が本物の薬だと思い込む」必要があります。
はじめから「偽物の薬」だと知っていたら、プラセボ効果は発生しません。
偽薬と知っていても、症状が改善
研究グループは、慢性的に腰痛を持っている患者97人について偽薬の効果を調べました。
患者を2つのグループに分け、片方のグループには通常どおりの治療を続け、残り半分のグループには、「プラセボ効果」に関する説明をした後で、「偽薬」と書いたラベルが貼られた薬を処方しました。
それから3週間後、患者らの「痛み」について調べたところ、偽薬を処方されたグループでも最大で30%も痛みの症状が改善されたという。
薬が有効だと思い込んで飲んだわけでもなく、「偽薬」と知っていながら飲んだとしても症状が改善された理由は、いったい何なのでしょうか。
なぜ偽物と知っていながら効果があったのか
今回の実験を行った研究者は、「医師と患者の信頼関係があったから」だとしています。
偽物の薬だと知っていたとしても、信頼している医師が処方する薬であれば、痛みが改善されるのでしょうか。
今回の実験のポイントは、改善されたのが「痛み」だったからかも知れません。
明確な答えはわかりませんが、「痛み」をもたらす原因には心理的なものが大きく影響している可能性があります。痛みのメカニズムについては、いまだ不明な点が多く残されているのも事実です。
今回の実験結果からは、プラセボ効果に関する未知の部分が明らかになったり、あるいは痛みを取り除くための新たな治療法につながる知見が得られる可能性もありますね。