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犬歯には3億年前から「セックスアピール」という大事な役割があった

歯並びを崩しやすい「犬歯」は、さほど役割があるとも思われないためか、八重歯などの原因になっていると「抜歯」してしまうケースもあります。役立たず感のある犬歯ですが、実はとても重要な役目があったという話。どうやら、はるか大昔から「セックスアピール」のための大事な役割を果たしていたという。

犬歯とは何か

そもそも、犬歯とはどういった歯なのでしょうか。

私たち人間の口には、親知らずをのぞくと上下にそれぞれ14本、計28本の歯があります。これらの歯は大きく3種類に分けることができて、「切歯」「犬歯」「臼歯」と呼ばれています。

切歯とは、いわゆる「前歯」のことで、中央に位置する上下に4本ずつある歯です。役割としては物を噛み切ることが挙げられます。

そして、前歯の外側に1本ずつある尖った歯が「犬歯」です。上下にそれぞれ2本ずつあります。

上下に2本ずつある犬歯より外側、奥まで続く平らな歯をすべて「臼歯」と呼びます。臼歯は前歯で噛み切った食べものをすり潰し、さらに小さくする役割があります。

それでは犬歯には、どのような役割があるのでしょうか。「肉を噛み切る」とも言われていますが、現代人は動物の肉も加熱して調理してから食べるため、あまり必要がないような気がしますね。

犬歯ができたのは3億年前

実は哺乳類が現在もっている切歯、犬歯、臼歯という種類の歯ができたのは非常に古く、今から3億年前にさかのぼるのだという。

このころの哺乳類といえばまだ現在のような形はしておらず、どちらかといえば爬虫類のような姿をしています。いわゆる「哺乳類型爬虫類」とも呼ばれる生物で、両生類から進化した「単弓類」という哺乳類の祖先です。

南アフリカのウィットウォーターズランド大学の研究グループが、哺乳類の祖先の頭部骨格をCTなどを使って詳しく調べたところ、実は犬歯は繁殖のパートナーを惹きつける道具として発達したのだと結論づけました。

頭蓋は柔らかくできていて、苛酷な闘争をくぐり抜けるには弱すぎたため、繁殖力を高めることで厳しい生存競争を勝ち抜いたというわけです。

決して無力ではない犬歯

それでは、現在において犬歯の役割はどうでしょうか。遙か昔、犬歯が異性を惹きつけるために進化したと考えてみると、何の役にも立たなさそうな犬歯も魅力的に思えてきませんか?

また、実は犬歯は切歯や臼歯と比べて最も強い構造になっています。

犬歯の根である「歯根」はとても長く、顎の骨の中までしっかりと埋まっており、さらに歯の表面を覆うエナメル質も最も厚くできているとのこと。

そのため、犬歯はほかの歯と比べて虫歯になりにくく、そして欠けたり割れてしまうことも滅多にありません。このことが、犬歯が肉を切り裂くために重要な歯だと言われる要因にもなっています。

このように頑丈にできている犬歯には、前歯である切歯と臼歯の間をつなぐ役割があります。最も強い犬歯が間にどっしりとかまえていることで、全体としての歯並びが安定に保たれているわけです。もし、しっかり根を張っている犬歯がなければどうなるでしょうか。

例えば、とても固い食べものを噛んだり、あるいは歯ぎしりするなどで大きな力が歯にかかることがあります。まっすぐ垂直に埋まって支えられている歯は、特に水平方向の力には弱いものです。これは、強い地震が発生したときに建物に与える影響を考えるとわかりやすいですね。

そのとき、しっかり根が深くまで埋まっている犬歯が前歯と奥歯の中間で支えることで、歯全体が水平方向にずれることを防いでくれます。このように、歯全体の構造強化の上でも非常に重要な役割を果たしているようです。異性へのアピールに使われているだけではないわけです。

八重歯の原因

八重歯とは、犬歯が正常な歯の列からずれて生えてしまった状態をいいます。このように「八重歯」になってしまうのはほとんどが犬歯ですが、いったいなぜなのでしょうか。

子どものころ、乳歯から永久歯に生え変わるときに、あごの骨が小さくて正しい位置に歯が生えそろうスペースがないとき、外側に押し出されて歯列からはずれた位置に生えてしまいます。これが八重歯です。

ではなぜ犬歯が八重歯になりやすいかというと、「犬歯が他の歯よりも後に生える」からです。

あごが発達するためにはよく噛むことが必要です。幼少期に柔らかい食べものばかりを食べてあまり強く噛む必要がないと、あごがあまり発達せず、犬歯が生えるのに必要なスペースが十分に確保できなくなって八重歯になってしまいます。

一方で、歯の大きさが大きすぎる場合も歯が正常に並ぶスペースが足りなくなり、八重歯になる原因となります。

1997年から5年間かけて児童の歯の大きさを調べ、70年代から80年代にかけての児童と比較したデータによると、どうやら歯の大きさが昔と比べて大きくなってきているようです。

タンパク質や脂質などの栄養を多く摂取するようになったことが原因になっているとみているようですが、現在ではさらに大きくなっている可能性がありますね。

そのため、昔と比べると八重歯になりやすい状況にはなっているのかも知れません。しかし、犬歯にも大事な役割があることは間違いありません。現在では歯並びを矯正する技術も進んでいますので、なるべく抜歯はせずに矯正によって歯並びを修正したいですね。

参考:TOCANA・Daily Mail
画像:My Best Pro TOKYO

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