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口内洗浄液「リステリン」に性感染症の予防効果の可能性、淋菌の増殖を抑制する

最近、「リステリン」という口内洗浄液(マウスウォッシュ)がじわじわと人気を挙げています。ドラッグストアでオーラルケアのコーナーに行くと、あの独特の色彩の影響もあってとても存在感がありますね。実はこのリステリン、口臭や虫歯だけじゃなくて「性病」も予防する効果がある可能性が、実験で示されました。




リステリンという歴史のある口内洗浄液

リステリン(LISTERINE)は、ドラッグストアなどに行くと普通に販売されている、医薬部外品の口内洗浄液です。

さまざまな種類があって色分けされていますが、あの独特の原色系の色彩は見た目にもインパクトがあります。

ネーミングや包装の雰囲気から日本製ではないことは一目でわかる製品ですが、実はとても歴史の長い口内洗浄液です。

最初に登場したのは産業革命時代のイギリスです。

当時は産業の急速な発展のなかで作業による事故も多発しており、また手術中の感染による死亡事故もあったことから、外科医だったジョゼフ・リスター博士が画期的な消毒薬を考案しました。

今から100年以上も前の1865年のことです。

この消毒薬のおかげで手術中の感染による死亡事故が減少したことから、リスター博士の方法に基づいて正式に消毒薬「LISTERINE」が誕生します。

もちろん、「LISTERINE」というネーミングはリスター博士の名前から命名されました。

その後、リステリンには口腔内における殺菌効果があったことから、口腔消毒薬として歯科医向けに販売が開始されます。これが1895年のこと。

そして、さらに20年が経過した1914年、リステリンは一般向けの口内洗浄液として販売が開始されます。

日本国内での販売はというと、最初に静岡県でテスト販売が開始されたのが1985年、全国で販売が開始されたのは1991年だという。つい最近のことですね。

リステリンは「淋病」を抑制する

100年以上前に消毒薬として開発され、その後口内洗浄液として販売されているリステリンですが、実はこれまで、性感染症の予防効果については全く検証されてきませんでした。

1879年当時、「リステリンは淋病を治す」とメーカーがうたっていたそうですが、その科学的根拠については明確に示されてこなかったわけです。

実際、現在においてリステリンを常用している人でも、「性病予防」を目的として使用しているのはまれではないでしょうか。

研究結果は、オーストラリアの研究グループが医学誌「性感染症(Sexually Transmitted Infections)」で発表されました。

研究グループは、2種類のリステリンについてさまざまな濃度の希釈溶液を作製し、淋菌の培養皿に塗布して菌量を調べました。

その結果、リステリンに培養皿での菌量を著しく減少させる効果があることが確認されました。

次に研究グループは、淋病の男性患者を対象とした実験も実施しています。患者にリステリンでうがいをしてもらい、その前後で喉の菌濃度を測定しました。

すると、ただの食塩水でうがいをした患者と比べて、リステリンでうがいをした患者は5分後の菌量が減少していることがわかりました。

淋病(淋菌感染症)とはどのような病気か

淋病は、「淋菌」と呼ばれる菌による性感染症です。淋菌は比較的弱い菌であるため、患者の粘膜から離れると数時間で感染力が失われ、日光や乾燥、温度変化などの影響で死滅します。そのため、性行為などのほかに感染することはまれとされています。

日本国内での淋病の発生状況については、1985年以降はエイズ啓発活動などによって減少しましたが、1999年以降は逆に増加傾向にあるという。

とくに20歳代の若者で多い病気ですが、女性の報告数が極端に低いと言われています。これは、男性より女性の方が感染例が少ないというよりも、自覚症状があまりないため受診していないことが要因だとされています。

淋菌の感染経路や症状

性行為によって淋菌に感染すると、男性の場合は尿道炎が起こります。症状としては、尿の出始めに痛みを感じたり、黄色い膿が出ることがあります。

一方、女性の場合は子宮頸管炎が起こりますが約半数は無症状と言われています。しかし自覚症状がないまま放置すると、骨盤腹膜炎を発症して強い下腹部痛が起こることがあります。

淋菌は弱い菌のため、空気中では長く生き続けることはできません。そのため、淋菌感染はほとんどが性行為によるものです。

感染部位については、男性では尿道、女性は膀胱、子宮、のどが多いとされています。性行為による感染の割合については、膣性交が約24%、口腔性交が約44%、その両方が32%だという。

つまり、オーラルセックスによって患者の性器から喉に感染し、そして喉が新たな感染源となって感染を広げていくケースも非常に重要になってきます。

そのため、性感染症の予防においてはコンドームを使用するとともに、口腔内の消毒によって喉の感染リスクを下げることもまた、重要なことなわけです。

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今回の研究結果から、医薬部外品としてドラッグストアで一般に売られているリステリンにも淋菌の増殖を抑制する効果が確認されました。

リステリンのみによって、どの程度の性感染予防効果が得られるのかについては、今後さらに検討をしていく必要があるでしょう。しかし、安価で簡単に手に入る口内洗浄液で有効な殺菌効果が得られるというのは、とても興味深い話ですね。

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