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鏡の前で食事をするとおいしく感じられるという実験結果がある

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ひとりで食事をするよりも、誰かと一緒に食べるほうがおいしく感じられるということが知られています。ところが、実はひとりであっても「鏡に映った姿」を見ながら食べるだけでもおいしく感じることが、実験で明らかになりました。




独居している高齢者がひとりで食事をする「孤食」が食欲の減退につながることが、社会問題として取り沙汰されています。

また、最近では高齢者だけではなく、大学生がトイレの個室で昼食をとるなど新しい「孤食」のタイプも指摘されています。

食事をするときに誰かとともに食べる方がおいしく感じられ、また食欲が増すことが知られていますが、その要因についてはよくわかっていません。

一緒にいる人との関係性やムードだったり、あるいは誰かと「同じ行動をする」こと自体が影響するなどの要因が考えられていましたが、必ずしもこれらの要因が必要ではないことも示されています。

それでは、いったい何が要因となっておいしく感じられるのでしょうか。

どうやら、「食事中に人の存在を感じる」というだけでおいしさが高まることが、実験から明らかになりました。

名古屋大の研究グループは「鏡に映った自分の姿」を見ながら食事をすることで、おいしく感じられるかどうかを調べました。

実験では、65歳以上の高齢者と大学生を対象に、塩味とキャラメル味のポップコーンを食べてもらいました。

それぞれ、机の上に上半身が映る縦長の鏡を置いたときと、背景の壁のみを映した同じ大きさのモニターを置いたときとで、どのくらい「おいしさ」を感じられたかを評価してもらいました。

その結果、高齢者と大学生のどちらも、自分の姿が映った鏡の前で食べたほうが「おいしい」と感じることがわかりました。また、実際に食べた量も鏡の前の方が多くなりました。

この結果から実は食事をおいしくするためには必ずしも「他者」を必要としないことがわかりました。

それではいったい「何」が影響しているのでしょうか。

鏡の中では映し出された「自分の姿」が自分自身の動きと同期して動きます。もしかすると「誰か」と同じ運動をするという「運動の同期」が、食事行為を促進している可能性があります。

そこで、次の実験では実際に食べている自分自身の姿を撮影した静止画を映したモニターと、壁だけが映っているモニターで、比較しました。

すると、この場合でも壁を映したモニターよりおいしさが高まることがわかりました。

つまり、「運動の同期」も必要ではなく、ただ誰かを近くに感じるだけで食事がおいしく感じられるということが明らかになりました。

ライフスタイルの変化から一人で食事をする機会が多くなっており、とくに高齢者では食欲の減退が社会問題となるとの指摘があります。

今回の実験から、「おいしさ」を高めるには単に「食事中に人の存在を感じる」だけでよいことがわかりました。最も簡単な方法として、目の前に鏡を置いて自分の姿を映し出しながら食事をするだけでも効果があることが明らかになりました。

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