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慢性的な睡眠不足は脳細胞を破壊する

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仕事や勉強で睡眠時間を削ってしまったり、あるいは夏の暑い夜が続いてなかなか眠れず睡眠不足状態になる―誰もが経験することですが、そんな日が続いてしまうと頭の中がなんだかボヤっとしてきます。このとき、脳内ではどのような状態になっているのでしょうか。なんと「脳細胞が破壊」されているという恐ろしい研究結果が発表されています。

日本人は世界的にみても睡眠時間が短いことは以前から指摘されています。とくに近年は平均時間の減少について、その弊害が取り沙汰されることが多くなってきています。どうやら、単に日中の仕事や勉強などでのパフォーマンスが低下するどころの話ではないようです。

イタリア・マルケ工科大学の研究グループがJournal of Neuroscienceで発表した研究「Sleep Loss Promotes Astrocytic Phagocytosis and Microglial Activation in Mouse Cerebral Cortex」では、睡眠不足が続くことによって脳細胞がダメージを受けることが示されました。

脳内には、アストロサイトとミクログリアという細胞があります。これらの細胞はグリア細胞と呼ばれています。研究では、睡眠不足においてアストロサイトとミクログリアがどのような働きをするかを調べました。

実験では、マウスを4つのグループに分けて睡眠の状態を変えて比較しました。

「安眠グループ」は、必要な睡眠時間(6から7時間)をしっかり取ることができます。
「安眠妨害グループ」は、睡眠中に何度か起こされます。
「睡眠不足グループ」は、通常の睡眠と比べて8時間以上起きていました。
「慢性的睡眠不足グループ」刺激を与え続けられ、4日半も起きていました。

実験の結果、安眠グループから慢性的睡眠グループへと睡眠の質が低下するにしたがって、アストロサイトの活性が高くなることがわかりました。アストロサイトは、不要になったシナプスを除去する機能が知られています。

慢性的睡眠不足グループのシナプスを調べてみたところ、よく使われているシナプスがアストロサイトの標的となって分解が行われていることも明らかになりました。

つまり、睡眠不足が続くと神経細胞間をつなぐシナプスがアストロサイトによって分解されてしまうことを意味しています。

一方、ミクログリアについても慢性的睡眠不足グループでは活性が高くなることもわかりました。ミクログリアはマクロファージのように神経細胞を取り込んで除去する「食細胞」としての機能があります。

さらに、ミクログリアの活性が高くなりすぎるとアルツハイマー病などの関係することもわかっています。実際に、これまでのいくつかの研究からは睡眠不足とアルツハイマー病など神経変性疾患との相関関係が指摘されています。

慢性的な睡眠不足は、脳細胞に対して分子レベルで悪影響を与えていることが明らかになったわけです。

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