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DHAは脳内の女性ホルモンを介して「てんかん発作」を抑制する

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青魚に含まれる油として知られているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、人間の体内にも存在しており、脳や目、心臓などに多く含まれると言われています。DHAは、必須脂肪酸である「オメガ3脂肪酸」の一種であって、不飽和脂肪酸に分類されます。




テレビなどではよく「頭がよくなる」して知られるDHAですが、その効果についてはあまりよくわかっていません。

血管系の病気を抑える効果としては、コレステロールや中性脂肪の低下、動脈硬化の予防、高血圧の抑制に効果があるとされています。

一方、脳に関係する効果では、記憶力の向上や抗うつ作用、アルツハイマー病の発症を抑えるなどといったことまで言われています。

このようにさまざまな効果が言われているDNAですが、今回、てんかんに伴う「けいれん発作」が抑制されることがマウスの実験で明らかになりました。

女性ホルモンの一種「エストラジオール」の合成を活性化させる

広島大学の研究グループは、通常の餌、オメガ3脂肪酸の欠乏食、オメガ3脂肪酸の欠乏食にDHAを添加した餌という3種類をマウスに摂取させて、それぞれの餌がマウスに与える効果を調べました。

これらの食事で1カ月間にわたって飼育を続けたところ、オメガ3脂肪酸欠乏食ではステロイドホルモンの合成に関わる酵素の発現が低下することがわかりました。

その一方で、DHAを添加した餌ではこの酵素の発現が増加することも発見しました。この酵素「P450アロマターゼ」は、女性ホルモン「エストラジオール」の合成に関与します。

そのため、実際に脳内でエストラジオールの量が変化したかを調べたところ、DHAを添加した餌を食べたマウスではエストラジオールの量が大きく増加していることが明らかになりました。

さらに興味深いことに、DHAを添加した餌を食べたマウスでは、けいれんの発症を引き起こす薬物を投与したときの発作までの時間が遅くなったことです。

そして、このけいれん抑制効果は酵素の阻害薬によって失われることも確認されました。

つまりDHAには、脳内でエストラジオールの合成を促進して、けいれん発作を抑える効果があることが明らかになったわけです。

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DHAによるてんかん発作予防メカニズムを解明:出典

研究グループによると、脳内で酸化ストレスが軽減されていることから、DHAの摂取によるけいれんの抑制には、エストラジオールを介した抗酸化作用があるのではないかということです。

脳内のエストラジオールの生理作用についてはまだよくわかっていません。しかし、これまでの研究から記憶や学習、神経保護に関わることもまた報告されています。

研究結果

今回の研究結果は、DHAによるてんかん発作の抑制効果をマウスの実験で確認し、そのメカニズムを明らかにしたものです。

今後はてんかん発作の予防のための薬物あるいは食事療法の開発などにつながることが期待されます。

また研究グループは脳内のエストラジオールについて、「神経回路網の形成などに働く多機能な分子であることから、DHAの抗けいれん作用のほかにもエストラジオールで説明できるのではないか」としています。