高齢者による絵本の読み聞かせボランティア活動が、加齢による海馬の萎縮を抑制する可能性があると、東京都健康寿命医療センター研究所の研究グループが国際雑誌に発表しています。
高齢化が急速に進んでいる現在、寿命だけではなく「健康寿命」を延ばすことあ重要であると言われています。特に高齢者の加齢に伴う認知症の予防の重要性が指摘されていますが、社会活動が予防に有効であることが言われています。
たとえば、2010年から2012年にかけて実施された調査では、スポーツ組織への参加割合が高かったり、あるいはボランティア活動など地域組織への参加割合が高い地域ほど、認知症リスクをもつ後期高齢者の割合が少ないといったことが明らかになっています。
しかし、こらまでに行われてきた調査研究では、その神経学的根拠については明らかにされていません。
そこで、研究グループは高齢者のボランティアが子どもに絵本の読み聞かせを行う「世代間交流プロジェクト」を立ち上げ、追跡調査を行いました。
調査では、脳の構造を調べるMRI検査を受けたプロジェクト参加者、および読み聞かせ活動を行わず健康調査だけに参加する健康モニターについて、6年後に再びMRI検査を受けてもらいました。プロジェクト参加者と健康モニターは、いずれも自由参加です。
読み聞かせ活動を行った参加者と健康モニターのみの参加者についてMRI検査の結果を調べました。
プロジェクト参加者と健康モニターの海馬容量変化(画像:東京都老人総合研究所)
健康モニターのみの参加者では正常範囲ではあるものの加齢に伴う海馬の萎縮が確認されました。
一方、読み聞かせプロジェクトの参加者については、海馬の萎縮が認められず、ボランティア活動によって萎縮が抑制されている可能性が示唆されました。
今回の研究では、厳密な無作為比較試験が行われていないために解釈には注意する必要があります。
しかしながら、高齢期における社会参加活動は脳神経細胞に強い影響を与える要因であることから、それによって健康な認知機能が保たれることを示唆すると、研究グループは指摘しています。