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自閉症児は音楽の好みが「早熟である」可能性がある

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自閉症の子どもは音楽の捉え方に特徴があることが霊長類研究所の研究グループによって明らかになりました。自閉症児はいわゆる「不協和音」の捉え方に関して、ある意味では早熟した音楽的好みをもっていることが示されました。




自閉症児の音楽的才能

自閉症スペクトラム障害は、社会性やコミュニケーションの能力などを基準に診断される発達障害ですが、最近では脳の多様性の一種としてとらえられる考え方もあるという。

自閉症の人々についてはさまざまな研究がこれまでに行われてきましたが、コミュニケーションが苦手とされる一方で、学問や芸術などで才能を発揮するケースも確認されています。

音楽的才能についても多くの事例が報告されており、これまでの研究からは絶対音感であったり、音楽の暗譜能力に秀でているといったケースもあります。暗譜とは、音楽の演奏で楽譜を使わずに演奏する能力のことです。

しかしながら、自閉症患者の音楽的能力についての研究は、これまでは演奏する能力に関するものが中心であって、音楽の認知能力に関してはあまり行われていない状況にあります。

そこで、研究グループは自閉症の子どもたちにさまざまな楽曲を聴かせて、その「聴取時間」を比べることで自閉症児がどのような音楽を長く聴き続けるかの特徴を調べました。

不協和音についての捉え方

実験では、自閉症スペクトラム障害と診断された4歳から9歳の子ども19人、および健常児28人にさまざまな音楽を聴かせました。

聴かせた楽曲は、ほぼ全編が協和音で作曲されているものと、若干の編曲を加えて不協和音を増やしたもの。

キーボードの特定の鍵盤を押し続けると、その時間だけそれぞれの音楽が流れる仕組みを用いて、どのような音楽を聴き続けるかを比較しました。

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協和音・不協和音の聴取時間(画像:京都大学)

その結果、自閉症児と健常児のいずれのグループも、もとの全編が協和音でつくられた楽曲の方が長く聴き続けること、そして自閉症児の方が不協和音を含む楽曲をあまり聴かないことがわかりました。

次に、不協和音をあまり含まない楽曲を2曲と、作曲者が効果を狙って不協和音を取り入れている楽曲を2曲、合わせて4つの楽曲について同様の実験を行いました。

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聴取時間(画像:京都大学)

実験の結果、興味深いことに自閉症児のグループでは、今度は不協和音を含む楽曲を長く聴き続ける傾向があることがわかりました。

今回の研究結果からわかったことは、自閉症児は健常児とは音楽の好みに関して異なる傾向があるということです。

自閉症児も健常児も不協和音を嫌う傾向があるものの、作曲者が効果を狙って意図的に取り入れた不協和音についてはより長く聴き続けました。これは、ある意味では健常児と比べて自閉症児の方が「早熟した」音楽の好みをもつとも言えます。

今後は、症状の程度によって傾向が異なるのか、自閉症患者の中で優れた音楽的才能をもった人を選んで検証した場合でも今回の同様の実験結果が得られるのかなど、より詳細に研究を進めていくとしています。