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覚せい剤の依存を抑える新たな分子をマウスの実験で発見

薬物依存を抑制する新しい分子がマウスを使った実験で発見されました。覚せい剤の嗜好性が弱まることが、世界で初めて確認されています。




報酬系で増加する分子「TMEM168」

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画像:富山大学大学院医学薬学研究部

マウスに覚せい剤を反復的に投与すると「TMEM169」と呼ばれる分子の発現量が増加することが富山大学大学院医学薬学研究部の研究グループによって明らかになりました。

この分子は体のいたるところで発現しますが、特に脳での発現量が多く、中でも「依存」に関わる側坐核と呼ばれる部位での発現量が著しく増加することが確認されました。

そこで、ウイルスベクターを用いてTMEM168の発現を強制的に増加させてみたところ、覚せい剤によってもたらされる運動量の増加や嗜好性が押さえられることが明らかになりました。

薬物依存では、ドパミンという脳内の神経伝達物質の働きが重要ですが、覚せい剤の投与によって増加する、細胞外ドパミンの量をTMEM168が抑制するという。

また、TMEM168は脳の神経細胞内でゴルジ体の中に存在して「オステオポンチン」と相互作用すること、オステオポンチンをマウスの脳内に注入すると覚せい剤依存が抑制することから、TMEM168はオステオポンチンを介して薬物依存を抑制すると考えられます。

今回の研究結果は、世界でも社会問題となっている薬物乱用の解決につながる可能性があると期待されます。