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ギャンブル依存は性格によるのか、脳の機能によるのか

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ギャンブル好きは性格なのか、あるいは脳の働きに起因するのだろうか。この問題についての研究結果が発表されています。




パチンコや競馬、競輪などから日常的なちょっとした「賭け事」まで、さまざまなギャンブルが身の回りにはありますが、人によって好き嫌いがはっきりとあるようです。

ただ好きなだけであれば問題はありませんが、依存症ともなると社会生活を送る上で影響が出てきます。ギャンブル依存症の人は日本国内では成人の約5%いるという厚生労働省による研究球結果もあります。

ギャンブルに依存する傾向がある人は、リスクを過剰に好む性格によるものだと一般的には考えられているようですが、詳細はよくわかっていません。その発症メカニズムも不明であって、治療法が確立されていないのが現状です。

はたして、ギャンブル好きは単なる性格の問題なのでしょうか。

京都大の研究グループは、ギャンブル依存症の患者と健常者を対象にした実験をして、ギャンブルと脳の機能の関係について調べました。

2つのグループそれぞれに対して、得点を獲得するゲームをしてもらいました。20回繰り返して目標の点数を得るゲームですが、各ゲームでは、得点する可能性が低いが点数が高い「ハイリスクパターン」や、逆に得点確率は高いものの点数が低い「ローリスクパターン」などの選択肢が用意されました。

これらのゲームの結果を分析したところ、ギャンブル依存症の患者ではリスクを冒さなくてもよい状況においても不必要にリスクを取る傾向がみられたという結果が得られています。

また、ゲーム中の脳の活動を機能的核磁気共鳴画像装置(fMRI)で調べたところ、ギャンブル依存症の患者は「背外側前頭前野」の活動が低下していること、またその周辺でのネットワークがうまく機能していないことがわかったとしています。

これらの結果から言えることは、ギャンブル依存はただ単に性格の問題ということではなくて、脳の機能に原因がある可能性があるということです。原因が明らかになれば、治療法の開発につながる可能性についても期待できます。

また、背外側前頭前野については「熟慮的な意思決定」に関係するとも言われています。この領域の皮質が厚い人と薄い人を比較した興味深い別の研究結果も発表されています。

背外側前頭前野の皮質が厚い人の場合、利己的行動が最終的に自分の利益を損ねる可能性があるゲームでは「利他的」に行動するが、そのような可能性がないゲームでは「利己的」に振る舞う。逆に皮質が薄い人では、いずれのゲームでも「利他的」に振る舞うことがわかりました。

利他的がよいのか、利己的がよいのかという話は別にして、この領域の皮質が厚い人ほど戦略的な意思決定が得意であって、「利他的な衝動を抑え込んで利己的に行動する」ということが明らかになっています。