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記憶力に効果的な2つの「香り」をファンケルが開発、認知症予防に期待

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高齢化社会が深刻化する日本では認知症の予防が大きな課題の一つとなっています。認知症の主な症状として「記憶力の低下」が挙げられますが、その予防には日常的に脳を活性化することが重要だと言われています。




ファンケルは2014年から「記憶力」に関する脳機能の研究を行っていますが、認知症予防に期待ができる、記憶力に効果的な2種類の香りを開発したと発表しています。

「香り541」と「香り622」

ファンケルでは、これまでに香りの成分である「テンピネオール」と「カンファー」そして「1,8シネオール」に記憶能力を高める効果を確認しています。

「テンピネオール」と「カンファー」は、「作動記憶」に関わる脳機能をサポートすることが確認されています。

作動記憶は、覚えた情報を最新の情報に置き換えながら行動につなげていくための記憶力で、会話や読み書き、計算といった日常生活を支える重要な能力として知られています。

一方、「1,8シネオール」は記憶力全般の機能を高める効果が期待できる成分です。

そこで研究では、これら3種類の香り成分をさまざまな比率で調合して、新たな香りである「香り541」と「香り622」を開発しました。

香りを吸入すると脳血流に変化

「香り541」と「香り622」の脳に与える効果を調べるため、28歳から44歳の健康な男女18人を対象とした実験を行いました。

実験では、「テンピネオール」単独、「香り541」、「香り622」それぞれを吸入しながらパソコン作業を行ったときの脳活動を、「光トポグラフィ装置」を使って調べました。光トポグラフィとは、脳活動によって生じる大脳皮質における血中ヘモグロビン濃度を調べる装置です。

実験の結果、「香り541」は作動記憶の中で「情報を覚える」こと、「香り622」は「最新情報に置き換える」ことに関連した脳領域で血流量が増えることがわかりました。

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香りを吸入しているときの血流量の変化量(ファンケル)

「情報を覚える」と「最新情報に置き換える」という2つの機能は、作動記憶における主な脳の機能です。

そのため、これら2つの香りは作動記憶そのものの機能を高めることが期待できることがわかりました。

今後について、ファンケルはこれらの香りがもつ機能性を、化粧品や健康食品などの開発に応用できないかと検討するとしています。