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自閉症スペクトラムは「方言」を使わない傾向がある

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日本人は「日本語」という1種類の言語を使っていますが、それでも各地方によってさまざまな「方言」が存在します。その一方で「標準語」もまた同じように使用することが多いですが、どうやら自閉症スペクトラム(ASD)の人は方言を使用しない傾向があることがわかりました。




日本には、方言主流社会と共通語中心社会があるそうです。そして日本国内の14地点について調べたところ、そのほとんどは方言主流社会に属することがわかっています。

方言主流社会とは、標準語もまた通じるけれども、方言を使ったほうがその地域ではより円滑に過ごすことができる社会のことです。

そのような地域では、「方言か共通語か」いずれか一方のみを話すということはなく、相手や場面、あるいは相手が話すことばや話題などに応じて、その時々で判断して使うことばを変えるような言語生活が営まれています。

このように、方言を使う住民にとって標準語と方言を両方使えることは、心理的な距離をことばで調節するなど、敬語や丁寧語などを使いこなすのと同じような「高度な表現技術」と言えるようです。

方言がある地域の子どもたちは幼少期から母親と同じ方言を多く使うものです。ところがASDの子どもの場合は、母親が方言を話すにもかかわらず方言を話さないといった特徴が知られています。

弘前大の研究グループは、ASDと方言の使用との関連を調べるため、東北の2地域と西日本など6カ所について地域の子ども、知的障害者、そしてASDの人たちについて方言の使用状況について調査を実施しました。

その結果、すべての地域においてASDの人たちが方言を使用するケースがほかと比べて少ないことが明らかになりました。

たとえば、高知市内にある特別支援学校で「土佐弁」と「共通語」の使用頻度を調べた結果の場合、ASDの場合は土佐弁を一語でも話すのは26名中12名でしたが、一方で非ASDでは18名中17名と、明らかな違いがありました。

さらに一人あたりの方言語彙使用数を調べたところ、ASDでは3.08だったのに対して非ASDだと12.11と有意な差が認められています。

このような傾向は、ある程度「方言」を使用する地域では東西を問わず広い範囲でみられたとのこと。

いったいなぜ、ASDでは方言を使用しない傾向がみられるのでしょうか。より詳細に原因などを明らかにすることで、ASDの解明とともに言語の機能そのものの理解にもつながる可能性があります。