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セロトニンは未来を信じて辛抱強く待ち続ける力を強くする

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日常生活やビジネスの現場では「辛抱強く待つ」ということがとても重要なケースがあります。報酬が得られる可能性や、その時期がわからない状況で、脳はどのようにして長く待つことを可能にしているのでしょうか。どうやらここでも「セロトニン」が活躍しているようです。

たとえば株式投資をする場合において、買った株の価格が上昇してから売って利益を獲得する必要があります。そのためには価格が上昇するまで待たなければなりませんが、いつまで経っても株価が上昇しない株を持ち続けることは時間の損失につながります。

このように、将来的に予測される報酬のために辛抱強く待つことは、その報酬を獲得するチャンスを増大させますが、一方で、あまり確実ではない報酬を待ち続けることは時間や体力を浪費するため、得策とは言えません。

このように、将来の報酬に対する「確かさ」に基づいて行動を柔軟に切り替えることが、より多くの報酬を得るうえではとても重要になってきます。

このような「辛抱強さ」を制御する脳のメカニズムはどのようになっているのでしょうか。

沖縄科学技術大学院大学の研究グループは、「セロトニン」が報酬の確実さの予測に応じて辛抱強さの調節に関与しているのではないかと考え、マウスを使った実験を行いました。

実験では、マウスが壁面に設置された小窓に「鼻を入れる」状態でじっと待つことで、エサを獲得できる課題を学習させました。この鼻を小窓に入れることを「ノーズポーク」と呼んでいます。

実験では、実際にエサが獲得できる「確率」と、そしてエサが獲得できるまでの「時間」を変化させました。それらの実験で、セロトニン神経を活性化させたときにノーズポークを続ける時間、すなわち辛抱強く待ち続ける時間がどのように変化するかを調べました。

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セロトニンの待機促進効果は報酬の確率に依存する(OIST)

実験の結果、報酬が25%の確率でしか獲得できないケースでは、ノーズポーク時間はセロトニンを活性化しても変化しませんでした。しかし報酬が75%の確率で獲得できるケースでは、ノーズポーク時間はセロトニンの活性化で長くなることがわかりました。

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報酬の時間的不確実性はセロトニンの待機促進効果を増大させる(OIST)

次に、報酬が得られる確率は高い(75%)が、いつ得られるかが予測できないケースにおいて、セロトニンを活性化させたときのノーズポーク時間の変化を調べました。

その結果、エサが「必ず6秒後に出る」ケースでは、セロトニンを活性化することでノーズポーク時間の延長時間は1割でした。

それに対して、エサが「2、6、10秒後のいずれか」で出るケース、つまりエサが出てくる時間が予測できないケースでは、セロトニンの活性化によってノーズポーク時間は3割以上も長くなることがわかりました。

つまり、報酬を得る時間が確実ではないケースにおいて、セロトニンによるノーズポーク時間を長くする効果が大きくなることが実験によって判明しました。

これらの実験結果からはどのようなことがわかるのでしょうか。

今回の研究結果からは、セロトニン神経の活性化だけでは辛抱強く待ち続けるには十分ではなく、将来の報酬に対する「主観的な確信度」が高いことが必要でることがわかりました。

そしてさらに、セロトニン神経の活性化は、報酬がいつ獲得できるかが不確実なケースにおいて、辛抱強さを効果的に高めてくれることもわかりました。

今回の知見は選択的セロトニン再取り込み阻害薬を使った精神疾患の治療にも応用できる可能性があります。今後は、脳のどの領域にセロトニンが働いて、辛抱強さの促進につながっているかを明らかにしていく予定だとしています。

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