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「汚いもの」を食べたくないのは人間だけじゃない、サルだって同じ

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私たちは「汚れてしまった」食べ物はなるべく避けようとする習性をもっています。「3秒ルール」なんていう独自のルールで誤魔化す(?)こともありますが、基本的には衛生的にキレイな食べ物だけを食べることを選択します。

このような習性は人間だけのものなのでしょうか。どうやら、そうでもないことが最近の研究からわかってきました。

自然界には有害な寄生虫や病原菌がいたるところに存在しています。動物はこれらの脅威を避けるため、「嫌悪感」によって体内に侵入することを防ぐ防衛システムを備えています。

たとえば人間は、血液や唾液、糞尿といった体液などは嫌悪感をもよおす因子となっています。人間はこれらに対して嫌悪感をいだくことで意識的に避け、結果として体内に侵入することを防いでいるわけです。

ところで、このような「嫌悪感の適応システム」は人間以外の霊長類でも備えているのでしょうか。この疑問に対して、京都大学の研究グループは人間に近い霊長類の一種である「ボノボ」を使って実験を行いました。

実験では、「糞あるいは土で汚れた食物」「汚物につながるように鎖状に置かれた食物」「実験前には汚れていた食物」「糞もしくは腐敗した食物の臭気」の4種類を用意して、サルも人間と同じように「嫌悪感」をいだくのかどうかを調べました。

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汚物につながるように鎖状に置かれた食物(京都大学)

たとえば糞の上にバナナを載せて、右側にバナナを鎖状に並べた実験。この実験では、ボノボは糞から最も遠い位置にあるバナナから食べ、糞に載ったバナナあるいは糞に接したバナナは食べませんでした。

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スライスしたリンゴの上に糞と土を載せたもの(京都大学)

こちらの実験では、3カ所にスライスしたリンゴを配置しています。中央のリンゴは汚れが付着していませんが、左右のリンゴは上に糞または土が載せてあります。

このケースでも、ボノボは汚れていない中央のリンゴのみを食べ、左右の汚れたリンゴは取ろうとさえしませんでした。

実験の結果、ボノボは汚れのない食物については喜んで勢いよく食べましたが、何らかの汚れが付着している食べ物には手を付けませんでした。

また、汚れの源である糞から最も遠い食物を食べることもわかりました。これは、食物が汚染源から遠ざかるについれて、このような汚物を避ける感覚が弱まっていくことを意味しています。

別の実験においても、ボノボは悪臭を感じた際にその臭いを放つ物質を触ったり味見するような行動を取らないことも確認されました。

これらの結果は、すなわちボノボも人間と同じように「嫌悪感の適応システム」を備えていることを示しています。

また、興味深いことに幼児や乳児の場合は食物の汚れに対して大人ほど注意しないことも明らかになりました。これは人間の子どもと同じ行動です。このことについて、研究グループは、成長の重要な時期に「免疫システムの発達」を助けているのではないかと仮説を立てています。

さらに研究グループは別の実験では、ボノボは食物について人間がもつような「新奇性恐怖症」をあまりもたない傾向も見出しています。

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ボノボは口にしたことのないプラムでも抵抗なく食べた(京都大学)

この実験では、ボノボの前にセイヨウスモモ、リンゴ、そしてパパイヤを並べています。ボノボにとって、パパイヤは常食の果物ですが、リンゴは普段はあまり口にしない果物、そしてプラムは初めて見る新しい食べ物です。

人間の場合は、これまで口にしたことがない新しい食物は避けたり注意深く扱う傾向があります。これは、病気を引き起こす物質を避けようとする性質と関係がある習性とされています。

しかし、今回の実験からは、ボノボはまったく新しい果物でも比較的抵抗なく口に運ぶことがわかりました。ボノボは食物に対する新奇性恐怖症が薄い傾向があるようです。

今回の研究結果から、ボノボも人間と同じように「嫌悪感の適応システム」を備えており、汚れた食物を避けることがわかりました。このような「汚れ物」に対する防御システムは、どうやら人間だけがもっている習性ではないようです。

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