動物の精子を長期間にわたって保存するためには特別な装置が必要です。しかし山梨大学の研究グループは、マウスの精子を1年以上も机の引き出しの中に入れたまま保存できる方法を考案しました。
さまざまな動植物の遺伝子資源を保全することは種の多様性を維持するためには必要なことです。しかし動物の生殖細胞や体細胞は液体窒素や超低温冷凍庫が必要なため、維持管理費が膨大になるといった課題があります。
また、大規模な震災などで液体窒素や電力の供給が止まってしまった場合にすべての細胞が死滅してしまうというリスクもあります。
山梨大学の研究グループは、絶滅動物の復活や悦滅危惧種を救済する技術の開発を行っていますが、動物の精子の室温での保存技術も研究しています。
研究グループは、世界ではじめてフリーズドライによって保存したマウスの精子から産仔をつくることに成功しています。
しかし、フリーズドライを使ったとしても室温では1カ月しか保存できず、長期にわたって保存するためにはやはり冷蔵庫が必要です。そこで、研究グループは室温でもフリーズドライの精子を長期保存できる方法を探索しました。
フリーズドライでも室温では短期間しか保存できない原因を探したところ、どうやらアンプルビン内に混入している空気にあることがわかりました。。
そこで、空気による悪影響を軽減するために真空度の高いアンプルビンを作製。これを使ってマウスの精子を保存したところ、室温でも1年以上保存できることがわかりました。
実際、研究グループは真空のアンプルビンに封入したフリーズドライの精子を「机の引き出しの中」に放置し、1年以上経過したものを使って100匹以上の産仔を得ることに成功しました。
産仔率は1週間保存のものと比べればやや下がってしまいましたが、3カ月保存とは同程度の成績、生まれた産仔の多くは健康だったとしています。
今回の方法だと特別な装置を必要とせず、場所もとらず維持費もかかりません。電力の供給が途絶えても影響を受けないためとてもメリットが大きいといえます。
今後はさらに長期間にわたって保存した精子を使って確実に産仔が得られることを証明していくとしています。