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乳児は口元を見て音声を模倣する、語学学習に応用できるか

外国語を習得するためには真似をすることが効率的ですが、そもそも人間の言語獲得においては「音声模倣」が重要な役割を果たすといわれています。乳児がどのように音声模倣をしながら言語を獲得するかの過程は、語学学習の参考になるかも知れません。




京都大学などの研究グループは、69名の6カ月児を対象とした実験を行って、乳児の音声模倣について調べました。

人間は、「あ」「い」「う」など母音の音声を生後5カ月ごろまでに模倣しはじめますが、どのような情報から模倣が促されるかについてわかっていませんでいた。

実験ではまず、発話者の通常の顔情報と上下回転させた顔をモニター上に提示して、発話音をスピーカーで流しました。その結果、上下回転した顔よりも通常の顔のほうが音声模倣を行うことがわかりました。

さらに、通常の顔情報のケースにおいて、発話者の口元を長く注視していた乳児ほど、音声模倣を行うこともわかりました。

正立条件(左)と倒立条件(右)の例(京都大学)

次に、アイコンタクトをしている発話者と目をそらしている発話者について調べました。その結果、アイコンタクトをしている発話者をモニターに映したときのほうが、乳児はよく音声模倣をすることもわかりました。

また、この実験においても発話者の口元をよく見ている乳児のほうが音声模倣をすることもわかりました。

直視条件(左)と逸視条件(右)の例(京都大学)

これらの実験結果からいったい何が言えるのでしょうか。

乳児に音声模倣を促す要因として、発話者の顔に含まれる視覚情報が重要であることは間違いないようです。さらに発話者からの視線があることは模倣を促進するようです。これらは、乳児をもつ家族にとって参考になる情報かも知れません。

また、そのほかの要因としては、乳児が発話者の口元の動きを注視している場合に音声模倣をはじめるケースが多いことが明らかになりました。

これについてはさらなる研究が必要ですが、乳児が音声模倣をするにあたって口の動きの情報を取得して音声模倣に役立てている可能性も考えられます。

外国語の学習をするにあたっては実際に外国語の発話者の音声を模倣することが重要です。

そこで、発話者の音声模倣をする際に口元の動きを確認することが重要であるならば、外国語学習についても音声のみではなくて、実際に話している人の口元の動きを見ながら真似をすると効率的に習得できる可能性があります。

聞くだけで学習するタイプの語学教材などが数多くありますが、単なる音声教材よりも映画など映像を見ながら音声模倣をする学習法のほうが人間本来の言語学習のメカニズムに適っているのかも知れません。