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企業による効果的な謝罪方法とはいったいどのようなものか、脳の働きから理解する

不正会計や法令違反、個人情報の漏えいなど企業が何らかの不祥事を起こしたとき、謝罪会見を開くことは通常の対応になっています。その際、どのような謝罪の仕方がよいのでしょうか。効果的な謝罪方法についての研究結果があるのでご紹介します。




なんらかの不適切な行いをして謝罪をしなければならない事態が起こったとき、個人間では「謝罪にコストをかける」ことで、誠意が伝わることが明らかになっています。

ここでいう「コスト」とはどのようなことのなのでしょうか。たとえば、被害者に対して補償を申し出るとか、自分にとって重要な用事をキャンセルして謝罪を優先するなど、「謝罪をする側にとって何らかの不利益が生じる」ことがコストになります。

このように、コストをかけてでも謝罪を行うことが、本当に申し訳なく思っている、関係を改善したいと思っていることを表明することに繋がるわけです。

では、企業や自治体、国などの集団が謝罪する際はどうでしょうか。集団による謝罪でも同様にコストをかけるほど誠意が伝わるのでしょうか。

神戸大学などの研究グループは、この問題についてある実験を行いました。

大学生108名に企業や組織が問題を起こしたケースを想像してもらい、それにに対して企業が「コストをかけて謝罪した」「単に謝罪した」「謝罪しなかった」の3つに分類してそれぞれの対応にどのていどの誠意が感じられるかを評価してもらいました。

ある企業の製品が発火する事故が発生したケースでは、その企業が「すぐに謝罪して製品の交換も行うと発表する」「単に製品の不具合について謝罪する」「調査中として謝罪しない」の3つの場面について評価しました。

実験では全部で10種類の組織の問題についてそれぞれ3種類の対応を想定し、計30種類のシナリオを評価しました。

その結果は次のようになりました。

誠意の知覚(神戸大学)

図が示すように、誠意の知覚はコストがかかる謝罪ほど高くなることが明らかになりました。

個人の謝罪についての研究では、誠意を知覚すると脳の「意図処理ネットワーク」が活発化することがわかっています。意図処理ネットワークには前頭前皮質や両側の側頭頭頂接合部、楔前部が含まれます。

組織の謝罪についてもfMRIを使ってこすとのかかる謝罪が意図処理ネットワークを活発化するかどうかが調べられました。

意図処理ネットワークの活発化(神戸大学)

その結果、両側の側頭頭頂接合部と楔前部ではコストのかかる謝罪で強く活動しました。一方、前頭前皮質については特に強い活動は示されませんでした。

意図処理ネットワークは、他者の意図を理解するときに活動する脳の領域で、ある人がどのように行動しているかではなく、どのような意図で行動しているか、心の状態を理解する働きをします。

研究からは、集団からの謝罪においても個人と同様に処理しており、個人間と同じようにコストをかけた謝罪が有効であることが示唆されています。

企業による謝罪は集団の利益の保持など個人とは違った目的でなされることもあるでしょうけれども、脳内においては個人であれ集団であれ同様に処理している可能性が示唆されており、そのことを理解することで、効果的な集団の謝罪方法なども理解できるようになると研究グループはまとめています。