バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 3.19 Tue

個体数が4以上になると「リーダー」が生まれるのか

動物は集団をつくるとリーダーとなる者が出てくるようです。これは、自然の摂理なのでしょうか。少なくとも、「鮎」の世界では4匹集まれば群れを率いる者が現れることが実験から明らかになっているようです。




集団の研究としては、個体数が千以上となる大規模な動物の群れの研究が近年盛んに行われているようです。

また、もっと小規模な、たとえば2匹から10匹ていどの群れの振る舞いについても研究されていますが、これらは個々の動物の動きが詳細に追跡できることから、集団の中での個体の行動を外から眺めるには適しています。

しかし群れの中での個体間のつながりではなく、「群れ」としての振る舞いについてはどのような研究ができるでしょうか。

筑波大学の研究グループは、近年では脳科学で注目されている「統合情報理論」と呼ばれる理論を動物の群れに適用しました。

統合情報理論とは、対象となるシステムが「一体」になっているかを測定するものです。

もともとは脳の発火ネットワークから人間の意識の状態を測定するものとして利用されていましたが、近年では脳とは関係のない分野においても応用されています。

研究グループはこの理論を鮎の群れに応用して、「群れとしての統合度」を計測しました。

その結果、3匹の群れと4匹の群れの間に質的なギャップが存在することが明らかになりました。

そしてそれは、グループの中にリーダーが存在するかどうかに対応していることがわかったわけです。

群れの統合情報量Φの時系列(筑波大学)

同じような分析を「BOID」という動物の群れの行動シミュレーションモデルでも行ってみましたが、しかし実験で得られたようなギャップは見られませんでした。

このことは、すなわち今回の実験で明らかになった3匹の群れと4匹の群れの間のギャップが、リアルな生物システムでのみ見られる特徴的な性質であることを示しています。

このような群れの振る舞いにおけるギャップは、人間社会でも存在する可能性があります。

3人のグループでは各個人が対等に振る舞っているものの、4人グループに増えることでリーダーが出てくる。たしかに実社会でもありそうな気がしてきます。