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新型コロナウイルス感染症で高齢者が重症化する仕組みを発見

新型コロナウイルス感染症では高齢患者で重症化率と致死率が高いことが報告されています。その原因として、血管内皮細胞へのウイルス感染および血管の障害や血栓の形成が関与している可能性が示されました。




新型コロナウイルス感染症の重症患者では、肺に多くの微小血栓が形成され、さらに全身の血栓・塞栓症を合併しやすいことが報告されています。

今回、京都府立医科大学などの研究グループは新型コロナウイルスが血管内皮細胞に感染すること、そして血管内皮細胞が老化するとウイルスに感染しやすくなることを発見しました。

また、新型コロナウイルスは血管内皮細胞に感染するとき、エンドサイトーシスを介して細胞内に侵入すること、特に老化血管内皮細胞では細胞表面のくぼみであるカベオラを利用して多くのウイルスが侵入することも明らかになりました。

カベオラとは50~100 nmの内腔をもつ丸フラスコ状の構造です。これまでも一部の病原体は細胞内に侵入する際にカベオラを利用することが知られていました。

実験では、感染から6時間の時点において、老化した血管内皮細胞は若い内皮細胞と比べておよそ800倍も多いウイルスが細胞内に侵入していることが示されました。

また、新型コロナウイルスはエンドサイトーシスを介して感染する一方、その後もエンドソーム内に留まったままで血管内皮細胞では増幅できないことも明らかになりました。その結果、ウイルスは感染後24時間をピークに減少し、感染72時間後には検出感度以下まで減少しました。

さらに、感染した血管内皮細胞では、ウイルスが細胞内から消失した後も多くの遺伝子発現に影響が及んでいることもわかりました。

その影響は老化血管内皮細胞で大きく、炎症や血栓形成に関わる遺伝子の発現が顕著に上昇し、さらに血栓形成を抑制する遺伝子の発現が減少することも明らかになりました。

これらの結果から、新型コロナウイルスが血管内皮細胞に感染することでその機能が障害され、血栓が形成されやすくなる可能性が示されました。

また、老化した血管内皮細胞ではウイルスに感染しやすくなり、またその影響も大きくなることから、血管内皮細胞の老化が高齢者における重症化の原因の一つである可能性も明らかになりました。

新型コロナウイルス感染症が高齢者で重症化する新しい仕組みを発見 〜血管の老化が鍵〜(京都府立医科大学)