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人が好む絵画の配色は「自然」とは似ていない

A rainbow of sample paint color swatches

色の好みは人それぞれ違うと考えられていますが、最近の研究から絵画の配色については多くの人が好む特定の特徴が存在することが明らかになっています。




実験的にも、色相を変化させた偽物の絵画よりも画家が描いた本来の配色を多くの人が好むことがわかっています。では、なぜ人は特定の絵画の配色を好むのでしょうか。また、絵画の配色にはどのような普遍的な特徴が存在するのでしょうか。

豊橋技術科学大学の研究グループは、3万人以上の参加者に対して、1,200枚の絵画について原画と90度、180度、270度色相を回転させた3種類の偽物、合計4種類に対して好みを調べました。

次に、これら4,800枚の画像に含まれる色の分布を示す12種類に統計量を求め、これらの色彩統計量と好みの関係について調べました。

その結果、赤-緑の歪度、明度と青-黄の相関、赤-緑と青-黄の相関が画像の好みと関連することが明らかになりました。

いったいなぜこのような特定の色彩統計量が画像に含まれる配色の好みと関係するのでしょうか。研究グループは、絵画配色が自然風景の色合いに似ているという「matching-to-nature」仮説に着目しました。

この仮説はこれまで多くの研究者が提唱していますが、画家は知らず知らずのうちにふだん目にしている自然風景の特徴を、自らが絵の中に埋め込んでいるということです。

もしそうであれば、今回明らかになった色彩統計量は自然風景のそれと似ていることになります。

研究グループは、この仮説を確かめるために人工物が映っていない自然画像1,200枚について色彩統計量を求め、絵画の色彩統計量と比較しました。

その結果、実は絵画の配色の好みと関連している統計量は自然風景とは系統的に異なる分布を示すことが明らかになりました。

つまり、絵画の配色は自然風景の単なる模倣ではなくて、絵画配色として固有の特徴が存在しており、そのことが観察する人の好みや配色の魅力と関係しているとのことです。

絵画に使われている配色は自然に含まれている配色をただ単純に模倣しているわけではないようですね。

絵画配色の好みは色彩統計量で決まる-「自然に似ている」ことは配色の好みを説明できない-