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オミクロン変異株のBA.4系統やBA.5系統の増殖能や病原性はどうなのか

新型コロナウイルスの感染患者から分離したオミクロン変異株であるBA.4系統とBA.5系統について、増殖能と病原性をBA.2系統やデルタ株と比較した分析結果が発表されています。




新型コロナウイルスのオミクロン株は2021年末に南アフリカで確認されてから、現在も世界規模で流行を続けています。

オミクロン株には少なくとも5つの亜系統が存在しており、BA.1からBA.5と名付けられています。

オミクロン株の流行が始まってからしばらくはBA.1株が主流でしたが、2022年1月からBA.2株の感染が増え始め、6月には世界で最も流行しました。

しかし7月以降はBA.5株に急速に置き換わり、日本を含む多くの国において、現在はこのBA.5株が主流となっています。

一方、南アフリカなど一部の国ではBA.4株の関連例が一時的に増えています。

東京大学医科学研究所などの研究グループは、BA.4株とBA.5株を患者から分離して、その性状を調べてBA.2株やデルタ株と比較しました。

ウイルスをハムスターに感染させたところ、デルタ株のケースではハムスターの体重が減少しましたが、オミクロン株(BA.2、BA.4、BA.5)では減少しませんでした。

また、BA.4株とBA.5株に感染したハムスターでは呼吸器症状の悪化もありませんでした。

ハムスターの肺や鼻におけるBA.4株とBA.5株の増殖能については、BA.2株と同程度でしたが、デルタ株と比べると低いことがわかりました。

肺の病理解析を行ったところ、BA.4株とBA.5株の感染ハムスターはBA.2株と度程度の軽度の炎症でした。

また、新型コロナウイルスの受容体であるヒトACE2を発現するハムスターを用いた感染実験においても、BA.4株とBA.5株の病原性と増殖能はデルタ株よりも低いことがわかりました。

このように、BA.4株とBA.5株のハムスターにおける増殖能と病原性は、いずれもBA.2株と同程度で、デルタ株と比べると低いことが明らかになりました。

一方、研究グループはBA.2株とBA.4株またはBA.5株を同時に同じ個体に感染させて、どちらの株がハムスターの呼吸器で増えやすいかを調べる競合実験も行っています。

その結果、BA.4株とBA.2株の競合実験の場合は、呼吸器で検出された株の割合は同程度か、ややBA.4株の方が高い結果となりました。

一方、BA.2株とBA.5株の競合実験の場合では、BA.5株の割合が高いことがわかりました。
患者から分離した新型コロナウイルス・オミクロン変異株のBA.4系統ならびにBA.5系統の性状解明