私たち人間は、恐怖や痛み、急な温度変化などのストレスにさらされると過呼吸を引き起こすことがあります。そのとき、皮膚の痛みが感じにくくなることが知られています。いったいどのようなメカニズムがあるのでしょうか。
過呼吸が起こるときは、その過換気によって体内の二酸化炭素が過剰に排出され、低二酸化炭素血症になり、脳血管が収縮して脳への酸素供給が制限されます。
そこで、筑波大学などの研究グループは体内の二酸化炭素濃度の変化が皮膚感覚を弱めることと関連があるのではないかと考え、実験を行いました。
実験では、成人男女15人を対象として、まず通常呼吸時における皮膚温度感覚を測定しました。
その後、ストレス時における過換気を模した自発的過換気を行うことで二酸化炭素を過剰に排出させた場合と、同時に二酸化炭素を吸入させて過剰な二酸化炭素の排出を防いだ場合を比較しました。
測定では、皮膚温冷覚閾値測定装置を使いました。
測定装置のプローブを前腕部や前額部に押し当て、プローブの温度を変化させていきます。温かさや冷たさを感じたときにボタンを押すことで、皮膚温度感覚の指標とします。
実験の結果、皮膚温度感覚は体内の二酸化炭素濃度が低下した場合のみ、鈍くなりました。
一方で、過換気中に二酸化炭素を吸入させて二酸化炭素濃度を維持した場合は通常呼吸時と皮膚温度感覚は変わらないことがわかりました。
これらの結果から、過換気による皮膚感覚の鈍化は過換気による体内の二酸化炭素濃度の低下が関連していることがわかりました。
研究グループは、夏の暑い環境下での運動だったり、冬の水難事故など大きな体温変化によるストレスで起こる過換気は、暑いや寒いといった感覚を鈍らせ、熱中症や低体温症の発生を助長している可能性があるとしています。
ストレスによる過換気が皮膚の温度感覚を鈍らせるメカニズム〜体内の二酸化炭素濃度の低下が鈍化を引き起こす〜