うつ状態のマウスに楽しい記憶を思い出させることで、うつの症状を改善することに成功したと、理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らの研究グループが、18日付の英科学誌Natureで発表した。
研究グループは、光に反応するタンパク質を発現する遺伝子操作マウスを生み出し、脳内で光を照射することで狙った神経細胞群だけを活性化する技術を開発している。
研究グループはまず、オスのマウスをメスと一緒に過ごさせて「楽しい記憶」を与え、その時に活動する脳の神経細胞群を特定して光に反応するタンパク質を組み込んだ。
次に、オスの体をラップで包んで40分間動けなくするストレスを10日間与え、砂糖水に興味を示さなくなるなどの「うつ状態」にさせた。
その後、楽しい体験をした時に活動した神経細胞群に光を照射して活性化したところ、照射している間だけ元通りの行動を示したという。
さらに、光の照射を1日15分ずつ計5日間つづけたところ、その翌日に行ったテストでは光の照射がなくてもうつ状態が改善した。
研究グループによると、うつ状態の間は楽しい記憶を楽しいものとして思い出せなくなっている可能性があるという。人工的な刺激によって楽しい記憶を呼び覚ますことで、症状の改善につながったとしている。
参考:毎日新聞/時事通信