最近は3Dプリンターを使った再生医療の研究も進められていますが、人工心臓もその一つです。ところが、心臓の血管など細かな部位は柔らかすぎるため、3Dプリンターで出力すると自重で潰れてしまうという問題があります。これを解決するために研究者が考え出した解決法とは?
米カーネギーメロン大のアダム・フェインバーグ教授らの研究グループが使っている3Dプリンターは、まったく特別なものではなく、一般に市販されている格安なものだそうです。
つまり、プリンターそのものに関してはとくに工夫を凝らしていません。今回の研究で、柔らかい組織でも自重で押しつぶされることなく出力するために採用した方法は、むしろ「出力する環境」にあります。
なんと、シャーレの中にゲルを作製し、その中に人工心臓用の「血管」を出力しました。出力された「血管」はゲルで保持されるために自重で潰れる心配がありません。
壊れることなく、ゲルの中に「血管」が作られています。ゲルの中に作製された「血管」は、壊すことなくそのままの状態でゲルから取り出す必要がありますが、ここにもまた工夫があります。
実はこのゲルは37度で溶ける水溶性の成分でつくられています。そのため、22度で3Dプリントされたゲルは、ちょっと温めてあげるだけで簡単に溶けて「血管」を取り出すことができるわけです。
人間の体温と同じ37度で溶けるゲルを使っているあたりは、おそらくゲルに保持されたまま移植するような使い方を想定しているのではないでしょうか。
研究グループは、すでに心臓の冠状動脈の分岐部分を3Dプリントすることに成功しているという。いずれは低コストで自在に人工心臓を作製して心臓移植に利用される日がやってくるかも知れませんね。
(via Gigazine)