バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.20 Sat

他者の顔から感情を推測する脳の部位を特定

「悲しみ」を推測する脳部位

 他者の表情から「悲しんでいる」と推測する際に重要な役割を担う脳の部位を特定したと、生理学研究所の定藤規弘教授らの研究グループが科学誌「Neuroscience Research」で発表した。対人コミュニケーション障害を抱える精神疾患の解明につながるという。

 他者の気持ちを正しく推測することは、社会生活を営むうえで重要な能力の一つである。これまでの研究では、相手の感情を推測する際にさまざまな脳の部位が関与することが知られていたが、他者から発せられるさまざまな情報の統合に必要な脳部位の詳細についてよく分かっていなかった。

 研究グループは、健康な成人女性61人に6種類の顔の画像を提示して「悲しさ」の度合いを回答してもらい、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で脳の活動を測定した。

 画像の表情は「悲しい表情」か「無表情」のいずれかで、それぞれ「涙の描写がある場合」、「涙に似た黒丸が描写された場合」または「何も描写されていない場合」の3条件を加えた6種類だった。

 実験の結果、「悲しい表情」を見たときは大脳皮質の内側に位置する内側前頭前野と楔前部・後部帯状回が強く活動し、特に「涙の描写がある場合」のときは相乗効果を示すことがわかった。相乗効果は「悲しい表情」と「涙の情報」が統合されていることを示唆しているという。

 一方、大脳皮質の外側部ではこのような相乗効果はなく、涙の描写がある画像が提示された際にのみ活動が確認された。

 これらの結果について研究グループは、顔の表情と涙の描写の統合には脳の内側部が重要な役割を果たすと考えられるとしている。

(via 財経新聞 生理学研究所