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経験的な恐怖より、本能的恐怖が優先される

 経験で得た恐怖よりも生まれつきの本能的な恐怖のほうが強いことをマウスの実験で突き止めたと、関西医科大の研究グループが19日付の米科学誌「Cell」で発表した。本能的恐怖を優先する仕組みに関わる神経細胞も明らかにした。

 マウスは本能的に肉食動物の臭いに恐怖を感じて危険を避けることができる。研究グループは、キツネから分泌される臭い物質と似た構造で、マウスが10倍の恐怖を感じる物質を発見した。

 一方、研究グループはスパイスの臭いを嗅がせた後に電気ショックを与える経験を繰り返すことで、後天的な恐怖をマウス9匹に植え付けた。恐怖の大きさはマウスの体が硬直する時間で判断した。

 次に研究グループは、本能的な恐怖と経験的な恐怖のどちらが優先するかを調べる実験を行った。2つに分かれた通路の両端に餌を置き、一方にキツネの臭いに似た物質を、もう一方にはスパイスを置いた。

 絶食させたマウスを通路に放つと、9匹中6匹がスパイスの側に向かい、残りの3匹はスタート地点から動かなかったという。本能的な恐怖が優先され、キツネの臭いを避ける結果になった。

 研究グループは、本能的な恐怖が優先される仕組みは、脳の扁桃体の中心核にある神経細胞が担うことも突き止めた。

 この神経細胞に作用する統合失調症の治療薬をマウスに投与したところ、後天的恐怖は半減したが本能的恐怖は2~3割強くなった。恐怖を緩和する薬が、意図に反して本能的な恐怖を強める可能性があるという。

(via 毎日新聞