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脊髄小脳変性症の原因遺伝子を同定

脊髄小脳変性症の原因遺伝子

 日本人家系における脊髄小脳変性症(SCD)の原因遺伝子を同定し、患者から作製したiPS細胞を用いて小脳プルキンエ細胞へ分化させることに成功したと、広島大学原爆放射線医科学研究所の川上秀史教授らの研究グループが英科学誌「Molecular Brain」で発表した。新しい治療法の開発につながると期待される。

 SCDは根本的な治療法が確立されていない難病で、遺伝的に多様性があることが知られている。2千人以上のSCD症例の遺伝学的な検討では、優性遺伝が推測される症例のうち約30%で原因遺伝子が不明で、依然として未解明な部分も多い。

 研究グループは、SOD発症の原因となる変異を同定したところ、CACNA1Gというカルシウムチャネルの1つをコードしていることがわかった。

 このチャネルは低電位活動型電位依存性カルシウムチャネルの1つである「CaV3.1」で、6回の膜貫通部位を4回繰り返す構造をしている。それぞれの繰り返し配列の中で4回目の膜貫通部位に電位センサーとしての役割があるが、今回同定された変異はこの電位センサーに存在する重要なアミノ酸を置換するであることがわかった。

 そこで、培養細胞に野生型と変異型のCaV3.1を発現させてパッチクランプ法で解析したところ、変異型ではプレパルスによる電流変化が陽性電位方向にシフトしていた。

 また、CACNA1Gの遺伝子異常をもつ患者の皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立して、小脳プルキンエ細胞へ分化させることにも成功した。

(via 広島大学