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肝がん再発予防薬「非環式レチノイド」の作用機序を解明

非環式レチノイド

 肝がんの再発を予防する薬剤「非環式レチノイド(一般名:ペレチノイン)」が肝がん細胞の細胞死を引き起こす仕組みを解明したと、理化学研究所の小嶋聡一特別ユニットリーダーらの研究グループが英科学誌「Cell Death & Disease」で発表した。

 肝がんは外科的手術などの治療後も再発する確率が高い。肝がん細胞を選択的に死滅させる非環式レチノイドは肝がんの再発リスクを20%以下に抑える効果があるとして、現在は臨床試験が実施されている。

 研究グループは2011年、非環式レチノイドが肝がん細胞に作用して、通常は細胞質にあるタンパク質架橋酵素「トランスグルタミナーゼ(TG2)」の細胞核への局在を引き起こし、転写因子「Sp1」を過度に架橋することを突き止めた。

 しかし、非環式レチノイドがどのようにしてTG2の核局在を引き起こすかは不明だった。

 研究グループは、TG2を構成するドメインのうち3番目のドメインに核内移行シグナル、4番目のドメインに格外移行シグナルがあることを突き止めた。

 さらに、非環式レチノイドがTG2に直接作用して核内移行の運び屋タンパク質「インポーチン」との複合体の形成を2倍に高めることで、TG2の核局在を引き起こすことを明らかにした。

 正常細胞におけるTG2の核局在は、肝障害や神経変性疾患などの原因になることが知られている。今回の研究成果はこれらの疾患の新しい薬剤開発につながる可能性があるという。

(via 理化学研究所