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コヒーシンが染色体構造を調節するメカニズムを解明、2つの制御因子でDNAを乗り降り

コヒーシン

 染色体構造を調節するタンパク質複合体「コヒーシン」がDNAに乗り降りを繰り返すメカニズムを解明したと、東京工業大の村山泰斗助教と英フランシスクリック研究所の研究チームが米科学誌「Cell」で発表した。発がんや遺伝疾患、不妊などの解明につながると期待される。

 染色体構造の調整を行う「コヒーシン」は巨大なタンパク質複合体のリングで、ゴムバンドのようにDNAを束ねて働くと考えられている。しかし、コヒーシンがDNAに結合する機構についてはよく分かっていなかった。

 研究グループは、コヒーシンと、その制御因子である「ローダー複合体」と「Pds5-Wapl複合体」を細胞から抽出して精製し、DNAに結合する反応とDNAから離れる反応を試験管内で再構成した。

 その結果、ローダー複合体はコヒーシンと結合してそのリング構造を折り曲げることによって、リングの内側にDNAを入れることがわかった。

 一方、Pds5-Wapl複合体はコヒーシンリングの特定のつなぎ目を開いて、DNAをそこから放出することもわかった。

 これら2つの制御因子によってコヒーシンはDNAに乗り降りを繰り返し、染色体構造の調節を行うと推察されるという。

 近年、コヒーシンの機能の異常や低下が、発がんや不妊と関連することが報告されている。このため、今回の研究結果はこれらの分子機構の基礎研究に貢献すると期待される。

(via 東京工業大学