バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.20 Sat

翻訳開始因子「eIF2B」の立体構造を解明、白質消失病の解明に期待

 幼児期に発症する遺伝性の神経変性疾患「白質消失病」の原因タンパク質「eIF2B」の立体構造を解明し、ストレス応答機構を明らかにしたと、理化学研究所の研究グループが英科学誌「Nature」で発表した。病態の理解や治療法開発につながると期待される。

 白質消失病は幼児期に発症して慢性的に進行する神経変性疾患で、運動機能の失調が主な症状。白質消失病は翻訳開始因子「eIF2B」の遺伝子変異が原因であることがわかっている。

 この疾患は、ウイルス感染や軽度の頭部外傷による発熱などのストレスで急速に症状が悪化する。

 eIF2Bは、他の翻訳開始因子「eIF2」に結合したGDPをGTPに交換することでeIF2を活性化する。ストレス環境下ではeIF2がリン酸化されており、eIF2Bによる活性化が阻害されず、細胞内のタンパク質合成が抑制される。

 しかし、このストレス応答機構の詳細なメカニズムや白質消失病との関連性はわかっていなかった。

 研究グループは、X線結晶構造解析法によってeIF2Bの立体構造を解析した。その結果、eIF2Bの変異の多くがeIF2に働く活性部位や、サブユニット間の相互作用面に集中していることがわかった。eIF2Bは10個のサブユニットから構成されている。

 また、eIF2BとeIF2に非天然型アミノ酸を導入して解析したところ、リン酸化されたeIF2と結合するeIF2B上の領域は、通常のeIF2を活性化する際に結合する領域とは異なることがわかった。

(via 理化学研究所