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複数のオスと100回も交配する乱婚性ヤツメウナギ、実はその多くは「疑似交配」だった

乱婚性の「ヤツメウナギ」のメスは複数のオスと100回以上も交配行動を行うことがあるが、実はそのほとんどは「疑似交配」だったと、北海道大の研究グループが発表しました。




ヤツメウナギの交配行動は、オスがメスの体に巻き付いて産卵を促すもので、基本的には1回の産卵でオスとメスがペアになって行います。

しかし、この交配行動を1匹のメスが複数のオス相手に数十回から多いときには100回以上も行うことがあります。長時間の交配行動はエネルギーを要し、また捕食される危険性も高くなるため、なぜこのような乱婚性の行動をとるかは謎でした。

研究グループは、ヤツメウナギの交配行動を詳細に観察したところ、実はその交配行動の35~90%(平均で65%)は、卵を放出しない「疑似交配」であることがわかりました。(100 回も交配する乱婚性ヤツメウナギ 実はほとんどが偽りの交配

一方、卵を放出していない疑似の交配であるにも関わらず、オスはしばしば精子を放出していることも確認されました。

また、メスの行うこの「疑似交配」は、周りにオスが多数いる場合に割合が高くなることも判明。そのため、メスがオスを選んでいる可能性があるとしています。

哺乳類や鳥類など体内受精を行う生物においては、受精につながらない交配行動が普遍的に見られます。これは、より良い遺伝子を獲得したり、あるいは、あえて父性を明確にしないことで複数のオスから子育ての協力を得られるなどのメリットがあるからだという。

しかし、体外受精を行う生物では、このように無駄とも思える交配行動を行うケースは珍しく、配偶者選択や繁殖システムの進化について、新たな知見が得られる可能性があります。