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遺伝子発現の乱れをタンパク質分解で調整する新しい仕組みを発見

遺伝子発現の乱れをタンパク質分解で調整する新たな仕組みを解明したと、岡山大の研究グループが科学誌「PLOS Genetics」で発表しました。




通常は、ゲノム上の遺伝子のコピー数が増加すると、それに比例して遺伝子の発現量が増加します。

しかし遺伝子の中には、コピー数が増えてもタンパク質量が増加しないものが知られており、どのような仕組みで調整されているのか不明でした。

研究グループは、酵母を使って遺伝子のコピー数を人工的に増やし、1コピー当たりのタンパク質量が減少する遺伝子を同定しました。

第一染色体の54遺伝子を調べたところ、そのうち5つの遺伝子が同定され、それらすべてが複合体を構成するタンパク質(サブユニット)であることがわかりました。

次に、これらの遺伝子の発現量がどの段階で調整されるかを調べたところ、mRNA量やタンパク質の合成速度は変化しない一方で、タンパク質の分解速度が大きくなっていることがわかりました。

細胞内には、さまざまな機能を発揮するタンパク質の複合体が存在します。複合体を構成する各サブユニットの量比が変わってしまうと、複合体の構造や機能が正常でなくなり、細胞全体に悪影響を及ぼすことが知られています。

今回の結果から、遺伝子のコピー数が変化しても増えすぎたタンパク質を分解することで、各サブユニットの量比のバランスを保つ仕組みがあることがわかりました。