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細菌叢の構成変化を介してクローン病のリスクを高める遺伝子変異を発見

特定の遺伝子の変異が細菌叢の構成を変化させてクローン病の発症リスクを高めていることを、北里大の研究グループが発見して科学誌「Human Genetics」で発表しました。




クローン病は消化管で慢性的な炎症を生じる疾患ですが、その遺伝性が高いことが知られています。また、発症には腸内における免疫システムの腸内細菌叢の相互作用が重要な役割を果たしているとされています。

これまで、疾患に関連する遺伝子変異を特定するゲノム解析がヨーロッパ人を対象に実施されており、200個以上の遺伝的変異がクローン病の発症に関連することが報告されています。

研究グループは、琉球大付属病院でクローン病患者、潰瘍性大腸炎患者、健常者からゲノムDNAと口腔内の細菌叢のDNAを採取して分析しました。口腔内における細菌組成は腸内でも反映されていることが、これまでの研究から示されています。

これまでに本州においてクローン病に関連すると報告があるTNFSF15遺伝子における6個のSNPsについて、患者と健常者で比較しました。この遺伝子は、細菌感染に対する免疫反応の活性化に関係することが知られています。

その結果、沖縄におけるクローン病においてもこの遺伝子の変異が発症リスクを高めることがわかりました。

一方、研究グループはこれまでに口腔内細菌叢がクローン病患者と健常者で異なることを明らかにしています。特に、Prevotellaと呼ばれる細菌群がクローン病患者で高く存在することがわかりました。

そこで、TNFSF15遺伝子の変異とこの細菌群の関連性を調べたところ、この遺伝子変異をもつとPrevotellaの量が増加することがわかりました。

さらに、この遺伝子変異によるクローン病発症リスクはPrevotella量で異なり、Prevotella量が少ない場合は発症リスクがほとんどなくなることも明らかになりました。

つまり、TNFSF15変異をもっていても細菌組成を制御することでクローン病の発症リスクを軽減できる可能性が示唆されました。

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