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アスペルガー症候群などへの有効性が確認された愛情ホルモン、実は悪用の危険性もある?

オキシトシンで自閉症を治療

 「愛情ホルモン」として知られているオキシトシンに、アスペルガー症候群など「ASD」の治療効果が確認されたと東京大の研究グループが発表しています。このホルモン、実は良好な人間関係の構築に有効な反面、悪用される可能性もあるという。





 
 アスペルガー症候群や自閉症など、コミュニケーション障害を主な症状とする「自閉スペクトラム症(ASD)」は、100人に1人以上で認められる代表的な発達障害です。

 原因は完全には解明されておらず、治療法も確立されていません。相手の気持ちや意図を感じ取ることができないことから、スムーズな対話や人間関係の構築が困難などの特徴があります。ASDは圧倒的に男性に多く、その8割以上が男性というデータもあるという。

 一方、愛情ホルモンとしても知られる「オキシトシン」は、陣痛促進剤としても使用されていますが、相手の表情から感情を読み取りやすくなる効果もあるとされていました。

オキシトシン

オキシトシンはASDの症状を緩和する

 東京大の山末英典准教授らの研究グループは、ASDと診断された男性20人に対して「オキシトシン」または「偽薬」を1日2回、6週間にわたって投与しました。投与方法は、スプレーで鼻に吹きかける方法でした。

 その結果、なんと8割にあたる20人中18人が、オキシトシンを投与した場合に効果が確認できたといいます。話しかけても小さい声で無表情に話していたのが、笑い返したり声に抑揚がついたり、あるいは相手に合わせてうなずく回数も増えたそうです。

 オキシトシンを投与した場合と偽薬を使った場合を比べると、ASDの重症度を示す数値はオキシトシンのほうが約2割低かったという。

 さて、オキシトシンを投与することで脳へはどのような効果があったのでしょうか。研究グループは、MRIを使って脳の活動を調べました。すると、他人の感情を理解する働きなどに関与する脳の活動領域が活発になっていたことがわかりました。

 オキシトシンには子宮収縮作用があるため、女性を対象にはできませんが、研究グループはさらに対象人数を増やした安全性や効果の持続を検証するための研究をすでに始めているとのこと。

オキシトシンが悪用される危険性もある?

 オキシトシンは良好な対人関係が構築されているときに分泌するとされており、闘争心や対人恐怖を和らげる効果があるとされています。そして今回の研究から、ASDの症状を改善する効果も確認されました。

 しかし一方で、相手への寛容度が増したり抵抗心が低下するなどの効果があるため、相手を盲目的に信用してしまい、不利な金銭契約を結びやすくなるというデータもあるそうです。またオキシトシンの使い方も、今回の実験のように鼻へのスプレーという簡単な方法が可能です。

 このように、対人関係を良好にするために有効なホルモンですが、詐欺などの犯罪に利用される危険性もあることは注意しておかなければならないかも知れません。

(via ヘルスプレス

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