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ニュータイプの遺伝子組換え作物が、「遺伝子組換え」の定義を揺るがす

先月、米科学アカデミーが「遺伝子組換え作物は安全」とする報告書を公表して話題になりましたが、それとはまったく別の問題が発生しています。遺伝子組換え作物の「定義」そのものが揺らいできました。




話の発端は「resist browing」つまり「黒ずまない」マッシュルームでした。

この特殊なマッシュルームは、ゲノム編集技術を使って遺伝子が改変されました。これまでの遺伝子組換え作物と異なるのは、「特定の遺伝子を欠損させた」からです。

ニュータイプの遺伝子組換え作物

マッシュルームが黒ずむのは、空気と接触することで「酸化」するからです。

開発したペンシルベニア州立大学の研究グループは、マッシュルームの酸化反応を進めるポリフェノールオキシダーゼの遺伝子群について、塩基をいくつか欠損させることで酵素活性を30%減少させました。

従来の遺伝子組換え作物では、生物のゲノムの中に別の生物などの遺伝子を人工的に挿入してつくられていました。そのため、遺伝子組換えされたかどうかを調べるためには、それらの遺伝子を検出すればよかったわけです。

ところが、近年のバイオテクノロジーの進歩によって、ある特定の遺伝子を効率的に欠損させることができるようになりました。そうなると、遺伝子組換えがなされた作物かどうかを簡単に特定するのが非常に難しくなります。

このような新しいタイプの遺伝子組換え作物について、米農務省は早々に「遺伝子組換え作物には該当しない」との判断を下しました。欧州ではまだ議論中ではあるものの、数カ月以内に決定が下されるという。

さて、日本ではどのように判断されるのでしょうか。

参考:WIRED