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音楽が味覚を変える?多感覚知覚とはいったい何か

食べ物の味を感じるのは「舌」であることは誰も疑いません。もちろん「におい」も味に関係しますが、他にも味に影響を与える感覚があることは、あまり知られていません。これを「多感覚知覚」と呼ぶそうです。




オックスフォード大学のチャールズ・スペンス博士は、多感覚知覚を研究している科学者のひとりです。

スペンス氏によると、味を判断するのは舌にある「味蕾」だけではなく、食べ物の色や歯ごたえ、形や照明などあらゆる感覚が影響を与えるのだという。

音が味に影響を与える

なかでも、高い音の音楽を聴くと「甘く」感じ、一方で低い音の音楽を聴いた場合は「苦み」を多く感じるという説は興味深い話です。

また、音の「大きさ」も味に影響を与えるという実験結果があるそうです。

研究では、大きい音や小さい音、あるいは無音のなかでポテトチップスやクッキーを食べる実験が行われました。

その結果、大きい音を聞きながら食べた場合は「塩味や甘みを感じにくかった」という結果が得られたそうです。

なぜ聴覚が味覚に影響を与えるのか

これらの感覚は、「多感覚知覚」と呼ばれています。これは、一部の人が感じることができる「文字に色を感じる」などの共感覚とは別のもので、誰でも感じられるものだという。

なぜ、多感覚知覚が生じるのか。

脳は、舌、耳、目、鼻など各感覚から得られた情報をそれぞれ単独で処理しているわけではないことがわかっています。目から入ってくる視覚情報や、耳から入る音の情報、そして鼻や舌で感じる情報などは、すべて同時に処理されます。

単独の知覚情報だけでは世界を把握することができないため、それぞれの情報を統合することで世界を理解しているからだという。そのため、各感覚から得られた情報は互いに影響し合うことになります。

赤色や黄色などの暖色系の色には食欲を増進させる効果があるなど、色が食欲に与える効果についてはよく知られていますが、どうやら「味そのもの」に対しても、他の知覚情報が直接影響を与えることがあるようです。

食事中の音楽をいろいろと工夫してみると、また違った味が得られるかも知れませんね。