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音楽はIQや学習、記憶、言語能力の向上に役立つ

音楽はIQや学習能力、記憶、言語能力などに好影響を与えるという研究結果が数多く発表されています。大人になってからでも遅くはありません。ピアノやギターなど、新しく楽器をはじめてみるのもアリかも知れません。




音楽が脳に及ぼす影響に関する研究

音楽がIQや学習などに好影響を与えるとの研究結果が、近年は数多く発表されています。

2004年、トロント大学のグレン・シュレンバーグ教授は、小学1年の生徒132人をキーボード、歌、ドラマのどれかを習うか、あるいは何も習わないかの4つのグループに分けました。

年度末にIQを測定したところ、音楽を習ったグループが他のグループと比べて有意に数値が上昇しました。

2011年には、同じくトロント大学のシルベインーモレノ准教授が48人の就学前の子どもを対象に調査研究をしています。

音楽のレッスンを受けた子どもは、わずか20日間でIQが向上し、その上昇率は視覚芸術の授業を受けた子どもたちと比べて5倍も高かったという。

音楽の訓練を行うと、計画を立てて体系化し、戦略を練って問題解決にあたる能力が向上することがわかったとまとめています。

ロサンゼルスの貧困地区に住む子どもたちに無料で楽器のレッスンを行う「ハーモニー・プロジェクト」によって、学校の成績が向上し大学進学者も増えたことを、ノースウエスタン大学のニナ・クラウス博士が研究しています。

6~9歳の44人を2年間にわたって追跡調査を実施し、子どもたちの脳活動を測定しました。

その結果、音楽を学んだ子どもたちの言語力や読解力、集中力に重要な能力が大幅に向上したことがわかりました。

2013年、ドイツ経済研究所が音楽、スポーツ、劇、ダンスのレッスンが学業に及ぼす影響について、17歳の生徒を対象に調査を実施しています。

その結果、音楽のレッスンを受けた生徒たちは他のレッスンを受けた生徒と比べて認識能力がかなり高く、学業成績もよく勤勉だったとしています。

スポーツをしている生徒は意欲的、劇やダンスは楽観的などの特徴もみられましたが、「学力」に関していえば音楽のレッスンが最もよい影響を与えたという。

音楽を使ったテストが学習障害を予想できるという研究結果もあります。

ブラジルの音楽教師パウロ・エステバオ・アンドラダ氏は、あるゲームを開発しました。一連のコードをギターで弾いて生徒たちに聞かせ、高い音か低い音かを表すシンボルを書かせます。

このゲームで成績が悪い生徒は、後になって深刻な読書障害を引き起こすことが多かったという。

さらに、ハーバード大学のナディーン・ガーブ助教らの研究グループは、このテストを使って3年間にわたる追跡調査を43人の生徒について行いました。

その結果、このテストの結果は読書障害のみならず、一般的な学習障害も予想できることがわかりました。

2009年、ボストンカレッジのエレン・ウィナー教授はらの研究グループは、31人の6歳児を対象に15カ月にわたる楽器のレッスンを行い、その前後で脳の活動をMRIで調べました。

その結果、レッスン後には微細運動能力と聴力に関係する脳の領域が大きくなり、脳の左側と右側をつなぐ脳梁も太くなったことがわかりました。

音楽は大人の脳にも効果があるのか

音楽が子どもの脳に好影響を与えることは事実だとしても、はたして頭の固くなった大人にも効果があるのでしょうか。

どうやら、高齢者であっても脳機能を向上させることは可能なようです。

心理学者のLutz Jäncke博士によると、65歳以上の人であってもたった週1時間の楽器演奏をするだけで、4~5カ月後には脳に大きな変化が生じたそうです。なんと、IQが7~8も高くなるのだという。

なぜ音楽は脳に好影響を与えるのか。

神経科学者のGottfried Schlaug博士は、音楽家の脳は灰白質が多いことを実証しました。灰白質は、灰白質は脳の神経細胞が集まっている部分です。

ベルギーのゲント大学の研究グループは、よくゲームをして遊ぶ子どもたちの脳でも、灰白質が大きいことを突き止めています。何らかの関係があるのかも知れません。

楽器を弾くことで、どのように脳の能力を向上させるのか。

ユナイテッド・スポーツ・ファウンデーションのJennifer Bugos氏が行った研究によると、60歳から85歳の人たちがピアノのレッスンを6カ月受けることで、情報処理や記憶再生能力のほか、口頭言語能力などの機能が向上したとしています。

音楽を弾くことでリズムを取る能力が発達、それによって耳から得る情報の処理能力が向上します。音楽をしている人は外国語の習得能力が高いことと関連がある可能性があります。

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ピアノやギター、トランペットなど、大人になってから新たに楽器の練習をはじめる人も増えています。もしかすると、単なる趣味としての楽しみ意外にも大きなメリットを享受できる可能性があるのかも知れません。